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裁判例で考える適切な請負

社会保険労務士法人ユアサイド代表社員 社労士 中宮伸二郎氏 キャリアパワー開催セミナーより一部抜粋

<目次>
東リ事件
偽装請負状態について
労務管理上の独立について
事業運営上の独立について
法を免れる目的について
まとめ

東リ事件

契約が請負・業務委託であっても、実態として労働者派遣であるものを偽装請負と言います。偽装請負が行われている場合、発注者に労働契約申込みみなし制度が適用され、そこで働く請負事業者の労働者が直接効用を希望すれば、発注者が直接雇用しなければなりません。

東リ事件(2021年11月4日大阪高裁)は、労働契約申込み制度が認められた事件です。

  • 1999年 業務請負契約締結 発注者社員と混在
  • 2014年 混在解消(発注企業の伝達は請負企業主任のみ)
  • 2015年 労働契約申込みみなし制度施行
  • 2017年2月 業務請負契約終了 (他社との派遣契約に切り替え)
  • 2017年3月 勤務していた労働者が、装請負なので、直接雇用の申し込みみなしがあり、それを承諾する意思表示
  • 裁判では、偽装請負の状態にあった、発注者に労働者派遣法を免れる目的があったと認められました。

    偽装請負状態について

    「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示」(いわゆる37号告示)に沿って、偽装請負状態であるか否かの判断が行われました。
    同告示では、請負事業者が独立して、受託した業務を行っていることを判断する基準として労務管理上の独立、事業運営上の独立をあげています。

    労務管理上の独立について

    この事件では、発注企業の伝達は請負企業主任のみ行うこととされていました。しかし、発注企業の伝達は、具体的な作業手順の指示と判断しました。その理由は、請負企業が、独自のノウハウや専門知識に基づき具体的な作業手順を検討し、考案するなどしていた形跡はなく、形式的に協議が行われたとしても実態として業務遂行上の指示が発注企業から行われていたということです。また、労働時間管理についても、時間外労働を発注者が直接指示をしていた、請負企業は、形式的に労働時間を把握しているが、労働実態を把握していないと判断されました。

    事業運営上の独立について

    製品不具合について請負企業が法的責任を求められた形跡はないと判断されました。また、製造ラインの賃借料2万円の根拠が不明であり、製造ラインの貸与について、修理費の負担について何ら定めがなく、発注者が修理費の一切を負担していたと認められ、製造機器を自己の責任や負担で準備し、調達したとは評価できないとしました。

    法を免れる目的について

    労働契約申込みみなし制度では、発注企業が労働者派遣法を免れる目的をもって請負契約を締結していることが要件となります。裁判では、次のとおり厳しい判断をしています。
    「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がない限り、組織的に偽装請負の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当」

    まとめ

    この事件の請負企業は、一般的によく言われる請負の条件を形式的に満たそうとしていたと思われます。しかし、裁判では、形式的に要件を満たしているだけではなく、実態を細かく検討して判断しています。請負企業側が形式的な現場責任者を配置しているだけでは、偽装請負と判断される恐れがあり、実態を伴った体制を構築する必要があります。

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