2025年の労働法制は、子育て世代や高齢者の「働きやすさ」と「活躍支援」を主眼に置いた改正が多く、企業にとって事前の準備と対応が必要となります。少子高齢化が加速して労働人口が減少するなか、「多様で柔軟な働き方」の環境整備の一環として働く人を「守る・支える」の視点に立った改正が相次ぎます。今年4月施行となる「育児・介護休業法」と「高年齢者雇用安定法」、「雇用保険法」について、改正の要所と留意点を整理します。
●改正育児・介護休業法
改正の骨格は(1)男女とも仕事と育児を両立できるような柔軟な働き方を実現するための措置と拡充(2)介護離職防止のための雇用環境の整備、個別周知・意向確認の義務化――の2軸です。具体的には、子の看護休暇の見直しとして、対象を「小学校入学前の子」から「小学校3年生終了時」までに拡大するほか、継続雇用期間が6カ月未満の労働者も新たに対象に加えます。
残業免除の対象も広がり、「3歳未満の子」を養育する労働者から「小学校就学前の子」を養育する労働者へと拡大。いずれも義務化で、就業規則の変更を伴います。また、従業員数1000人以上の企業に義務化されていた「育児休業取得状況の公表」を従業員数300人以上に見直します。
子の看護休暇の改正については、対象拡大だけでなく、取得理由も幅広くなっていることが特徴で、施行後は休暇を申請する社員が増えてくることが予想されます。現在、1日単位で取得を認めている企業が大半だが、柔軟性を高めるため、今後は半日単位や時間単位での取得を認める企業が増えそうです。
介護休業や介護両立支援制度の関係では、 個別の周知と意向確認が義務付けられ、介護をしなければならなくなったと申し出た労働者に対して個別に面談等を行い、介護休業制度等についての説明と制度利用の確認を行う必要があります。加えて、介護に直面する前の早い時期(おおむね40歳)に、個別に面談をして介護休業制度について情報提供をしなければなりません。
●改正高年齢者雇用安定法
経過措置が終わり、65歳までの雇用確保が義務化される。定年年齢を65歳未満に定めている企業は、(1)65歳までの定年の引上げ(2)希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度の導入(3) 定年の廃止――のいずれかの措置を講じる必要があります。65歳までの継続雇用については、対象者を限定しても良いとする経過措置が認められていましたが、この経過措置は2025年3月31日に終了して、4月1日からは希望する従業員全員に対して65歳までの雇用機会の確保が義務化されます。
ただし、この継続雇用に関しては、対象者はあくまでも希望者となるので全員を雇用する義務は生じません。また、以前から継続雇用の対象者を限定していなかった企業は改正の影響を受けません。
一方、「雇用確保」を巡っては、2021年4月から企業に対して 「70歳までの定年延長または他社への再就職の実現」が努力義務として施行されています。例えば(1)定年延長(2) 定年廃止(3)継続雇用制度(4)70歳まで継続的な業務委託契約(5)70歳まで継続的に社会貢献事業などに従事――のいずれかを実施する必要があります。今春の改正と併せて確認しておくことをお勧めします。
●改正雇用保険法
高齢者雇用継続給付金が縮小されます。この給付金は賃金の最大15%でしたが、改正後は最大10%になります。多くの企業で60歳を超えた従業員の賃金が引き下げられている実情もあり、賃金減少を補うために給付金を活用する企業は少なくありません。従業員の生活の安定や経験豊かな人材の継続雇用につながる「支援制度」で企業にも働く側にもメリットがありましたが、政府は高年齢者の雇用が一般化・拡大しているとみています。
過去には最大25%でしたので、段階的に縮小して廃止する流れにあります。この見直しの対象は、今年4月1日時点から60歳になる労働者です。また、所定労働時間が20時間以上の一般被保険者であれば、パートやアルバイトも支給対象となるのが特徴です。
提供:アドバンスニュース
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