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離職・退職者の派遣受け入れについて|1年以内の禁止ルールを解説

<目次>
導入文
自社を退職後1年以内の派遣受け入れ|原則禁止の理由
1年以内の退職者の派遣受け入れ禁止ルールの詳細
 1.対象となる雇用形態と会社(法人)の範囲
 2.1年以内の禁止期間について具体的な数え方
退職者の派遣受け入れルールを違反した際のリスク
 派遣先企業が受ける助言・指導・勧告・公表
 元社員と発覚した場合の具体的な対処法
派遣法の例外|退職後1年でも受け入れ可能なケース
 例外対象は60歳以上の定年退職者のみ
 60歳以上の定年退職者が例外である理由
【まとめ】 退職後の派遣受け入れは禁止|人材管理のシステム化を!

導入文

「「自社の退職(離職)者を派遣社員として受け入れたいが、問題ないだろうか」
このように心配される、人事担当の方もいるのではないでしょうか。

労働者派遣法では、企業が直接雇用していた労働者を派遣で受け入れる場合、離職から1年過ぎてからが原則と定められています。

なぜ、このルールが存在するのか、違反した場合どうなるのか。
今回は離職1年以内の派遣禁止ルールが制定された背景やルールの対象・行政指導の内容を分かりやすく解説します。

60歳以上の定年退職者といった例外ケースも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

自社を退職後1年以内の派遣受け入れ|原則禁止の理由

退職(離職)者を1年以内に派遣で受け入れる行為は、原則として禁止されています。

「派遣における退職者の受け入れルール」ができた契機は、2008年のリーマンショックでした。
当時、経営不振から正社員を解雇し、派遣として再雇用する企業が現れました。
こうした行為は労働者の立場を不安定にさせるため、問題視されたのです。

そこで国は労働者の権利を守る目的で法改正を行い、離職から1年以内の派遣受け入れを原則的に禁止としたのです。
この狙いは、企業による派遣制度の安易な利用を禁じ、人件費削減や雇用の調整弁にさせない点にあります。

1年以内の退職者の派遣受け入れ禁止ルールの詳細

退職後1年以内の派遣が禁止されている背景は、先に述べた通りです。
では、このルールは具体的にどのようなケースで適用されるのでしょうか。

● 正社員だけでなく契約社員も対象か
● 期間はいつから数えるのか

人事担当者として、こうした具体的な適用範囲は正確に把握すべきです。
この章では、禁止ルールの対象となる雇用形態や期間の数え方を解説します。

1. 対象となる雇用形態と会社(法人)の範囲

派遣受け入れ禁止ルールは、原則的に「すべての直接雇用者」に適用されます。
社員・アルバイトなど就業形態は問いません。
仮に1日で退職した労働者や短期就労者でも、直接雇用されていた労働者であれば該当します。

また、派遣受け入れ禁止ルールの対象は「事業者単位」です。
例えば、ある企業のA工場を退職した場合、離職後1年過ぎるまで同じ企業のB工場への派遣も禁止されます。
ただし、子会社などグループ企業の場合は同じ事業者に当たらないため、派遣受け入れ可能です。

2. 1年以内の禁止期間について具体的な数え方

派遣受け入れ禁止ルールの適用期間は「離職した翌日から起算して1年」です。
以下の具体例で説明します。

1. A社で働く田中さんは「2025年7月31日付け」でA社を退職
2. その後、田中さんはB派遣会社に登録
3. 2026年4月1日、B派遣会社は田中さんをA社に派遣しようと考えた
4. しかし田中さんはA社退職から1年を過ぎていないため、A社受け入れ不可
5. 結論として、田中さんは「2026年8月1日」からであればA社で派遣社員として働ける。

離職期間の起算日は、退職日ではなく「退職の翌日」である点に注意しましょう。

退職者の派遣受け入れルールを違反した際のリスク

退職者の派遣受け入れ禁止ルールを守らないと、企業としてさまざまなリスクを負います。
ここでは、派遣先が受けるリスクと対処方法を解説します。

● 派遣先企業が受ける助言・指導・勧告・公表
● 元社員と発覚した場合の具体的な対処法

万が一に備えて、違反のリスクと対処法を知っておくことは大切です。
ぜひ一度、目を通しておきましょう。

派遣先企業が受ける助言・指導・勧告・公表

派遣法違反が発覚した場合、行政による指導は段階的に重くなります。
まず、最も軽微な措置として、問題点の改善を求める「助言」「指導」が行われます。
助言や指導の段階で是正すれば、大きな問題には発展しません。

しかし、指導に従わない場合は、より強制力のある「勧告」が出されます。
勧告は、企業に対して具体的な是正措置を強く求めるものです。

さらに勧告にも応じないと、最終手段として企業名が「公表」されます。
社名が公表されれば、企業の社会的信用は著しく低下するでしょう。
このように、違反の内容や対応によって措置は厳しくなっていきます。

e-Gov法令検索|労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律

元社員と発覚した場合の具体的な対処法

派遣社員が1年以内の自社退職者だと発覚するケースは少なくありません。
その場合、派遣先企業には法律上の義務が発生します。
通知義務を怠ると、派遣先も行政指導の対象となるため注意が必要です。

まず、気付いた時点ですぐに派遣元会社へ通知しなければなりません。
この通知は、書面やFAX、電子メールで行う必要があります。
必ず文字として記録が残る方法を選択してください。

対面や電話など口頭での連絡のみでは、通知義務を果たしたとはいえません。
通知後、派遣元は労働者派遣法に基づき、当該派遣契約を解消する流れとなります。

派遣法の例外|退職後1年でも受け入れ可能なケース

派遣法に定められた、派遣受け入れ禁止ルールの例外と理由を解説します。

● 例外対象は60歳以上の定年退職者のみ
● 60歳以上の定年退職者が例外である理由

法の例外まで理解すれば、より正しい対応が図れます。
それぞれみていきましょう。

例外対象は60歳以上の定年退職者のみ

離職から1年を過ぎていない退職者でも、60歳以上の定年退職者であれば派遣社員として受け入れ可能です。

労働者派遣法第40条の9第1項には、以下の例外規定が定められています。
「雇用の機会の確保が特に困難であり、その雇用の継続等を図る必要があると認められる者として厚生労働省令で定める者を除く」

具体的には、60歳以上の定年退職者を指します。

60歳以上の定年退職者が例外である理由

60歳以上の定年退職者が「離職者の派遣禁止ルール適用除外」とされているのは、主に以下の理由からです。

● 定年後の雇用機会の確保
● 蓄積した経験とスキルの活用

60歳以上の定年退職者は年齢的に再就職が難しく、退職後の生活が不安定になる恐れもあります。
また、定年退職してもまだまだ働きたい、社会貢献がしたいと考える高齢者も少なくありません。

定年後も働きたいと考える労働者のため、スキルや経験を活かせる就労の機会を確保することが例外規定の目的です。

【まとめ】 退職後の派遣受け入れは禁止|人材管理のシステム化を!

1年以内に自社を退職した社員は、派遣受け入れが原則禁止されています。
違反に対する指導は、派遣元だけではなく派遣先にも及びます。

知らないうちに法律違反をしてしまうことのないよう、派遣先でも派遣社員の管理は必要です。
人材管理システムを導入し、派遣社員の管理を徹底しましょう。

また、法の遵守には派遣元との協力や情報交換も欠かせません。
ルールを守るため、派遣元とのコミュニケーションは密にしましょう。

メタディスクリプション
労働者派遣法は、離職後1年以内の退職者を派遣社員として受け入れることを禁止しています。本記事では、禁止ルール制定の背景・対象者・違反のリスクを解説します。退職者の派遣受け入れを検討している派遣先の人事担当をされている方は、ぜひご覧ください。

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