キャリアパワー

  
capo vol90

新型コロナウイルスが拡大感染する中で この1年間の動き

今回のコロナの問題では、大学も含めて指導層のパフォーマンスがかなり問われたのではないか思います。どのような対策を取るか、どのような決断をするのかという事は大きな問題でした。当然大学ですので、最初は学習機会をどうするのかという点が論点でした。そのため、私たちは早くから教育の機会を与える形を取ることにし、昨年の4月頃からオンライン授業を開始しました。京都精華大学は特殊で人文系学部もありますが、芸術系やデザイン系の学部が大半ですので、教員達は学生と一緒になって、初めて物事が教えられます。人文系でもゼミでは学生と語りながら教える手法でしたので、対面の授業が一気に実施出来ない状況になったことには、学生側も先生側も抵抗がありました。そのため、まわりに安心感を与えつつ、とりあえず実施してみて、軌道に乗せるという作業は非常に大きな意味を持っていたと思います。やはり、カリキュラムですので遅れを取れば取るほど学生がその分学修機会を失うことになります。このあたりは、出来るだけ学生をサポートし、職員は厳しいシフトの中で学生に画材やコンピューターを送ったり、学生が図書館で頼んだ本を送ったりして、最初は学ぶための環境作りを中心に行動しました。学生は毎日学校に来て長い時間を過ごしていましたが、一部の学生においては自宅のインターネットなどの学習環境は充実していませんでした。この辺りはすぐにサポートしなければいけないという状況でしたので、私達は資金援助を行うことにしました。給付金として、全学生に5万円を支給して、その後コンピューターや機材がない学生には無償で貸与しました。あとは、学生相談室のオンライン面談の機会を作り、担当の先生とも面談できる環境を作りました。先生達はゼミ単位で自分の担当学生と毎週面談が出来るようになりました。
しかしその反面、課題や卒論・卒制を抱えている学生は全くアトリエが使えない状況でした。例えば、石を扱っている立体造形は石を削るような機材がなく学校に行かないと作業が出来ない状況でした。このような状況に置かれている学生達から「学校を使いたい」という声が上がったため、7月頃には1日あたりの学生数を限定して一部実習室などをオープンしました。授業に関してもオンラインがメインでしたが、一部対面で対応を始めました。

日本では学長同士の会議が頻繁に行われます。例えば大学コンソーシアム京都を通して市長と学長達が話をする機会や、定期的にある京滋地区や京阪神地区の学長会議では、情報交換をする機会があります。身近なところだけではなく、全国のレベルでもあります。今年は、やはりコロナに関する話を沢山しました。特に今年1番目立ったのは入試改革です。今年は入試改革が行われて初めての入試実施のため、各大学でどのように入試が行われるかということについては、コロナが無くとも大変な状況でした。新しい入試制度が導入され、今までのセンターが無くなり共通テストという名前が戻ってきたり、AO入試が無くなり一般選抜や総合選抜という名前に変わったりして、非常に入試自体のフレームと時期が変わりました。そのため、夏から後期にかけてはバタバタしている場面が多かった印象でした。その時も学長同士の意見交換で参考になるようなものもたくさんありました。

オンラインのメリット、デメリット

オンラインの活用が社会的に拡大しました。オンライン誕生日会やオンライン飲み会はとても新鮮でした。いつも学生達と会う時は外に出てきてもらうことが多いですが、オンラインならば自分の部屋から繋いでいるため、色々と知らない部分も見えてきて、面白かったです。
オンライン授業に関しては、普段あまり学校に行こうとしない学生も、オンライン授業には参加していました。オンラインであれば、引きこもりであろうが授業が取れます。そのため、一定層の学生が救われたことはメリットでもあります。しかし、オンラインは段々形式化してしまう部分があり、ずっと集中し続けないといけないといけないため限界があります。普通の授業なら時々見られていない時にふと気を抜く瞬間はありますがオンラインでは難しいです。私も会議が全てオンラインに変わった時は、目の前の画面上に皆さんが並んでいるため、ずっと見られている感覚でリラックスすることが出来ませんでした。
結果的に、オンラインによりいつの間にか私達の神経の使い方が変わってきていました。人間関係も少し距離があり、手が届かないというデメリットもありましたので、京都精華大学でも後期はどうするかという話し合いをしました。その時は、全てオンライン授業に変えていましたが、10月から88%の授業は対面で行い、12%程度をオンライン授業に残しました。変更した理由は、オンラインの中にずっといると人との距離の取り方や注意の仕方は、頭の中で分かっていても現実的に実行出来なかったためです。やはり、京都精華大学の学生は社会に触れることによって、自分自身の立ち位置を磨いていくことが重要だと再認識しました。
あとメリットとしては、グローバル展開についてです。海外の学生達と一緒に共同授業をする際、今までであれば長距離移動をして初めて出来たことが、オンライン上で出来るようになりました。しかし、オンラインを取り入れることで、日本の大学は対面を基本としていたことが分かりました。オンラインの環境整備とそのためのスタッフが不足していたため、オンライン導入することにより、私達に不足している知識、技術の補充や、求める教育支援人材の内容も変わりました。
もう1点、オンラインを導入することで会議が組みやすくなりました。移動がないため、次から次へと繋いでしまいます。例えば、A会議とB会議とC会議があったとして、それぞれ15分間隔で会議が入ると相当疲れます。時々、2~3時間通して話した後、すぐに4時間のインタビューが続くことがありました。移動がないから良いと思われていますが違います。同じコンピューターで5分くらい前まで違うURLで入り、終わるとすぐまた別のURLに入るという作業を繰り返していくと全く頭が追いつかなくなります。オンラインを取り入れることで、移動時間も休憩時間も全く計算しないスケジュールの組み方になりました。後に会議と会議の間隔は調整しましたが、オンラインが導入されることによって、こちらの働き方や休憩管理の仕方などの調整が厳しい面も出てきました。移動時間は、何とも思わなかった時間ですが、意外とリラックスしたり、景色を見たりして、実はリフレッシュしていたということが分かりました。

京都精華大学のこれまでの変化と今後の取り組み

京都精華大学は私がちょうど学長になった年、2018年に50年を迎えました。大学としてこれから50年後どうしたいのか。まだ何かを存続させたいのであれば、20年後30年後の社会を見据えた上で学生たちにどんな力が必要なのか。やはり、大学として社会にどのように参画していくかということは考えなければいけないと思います。情報化時代になり、情報に振り回されている部分もありますが、確実に今、その方向に向かっています。特に日本を考えた場合、まず確実に人口が減っていきます。そして、労働力が不足する分、どのように補っていくか、どのようにすれば有効に使えるのかを考えていくことが重要だと思っています。
さらに、アジア諸国、アフリカ諸国と日本はどう付き合っていくかを考えることです。このグローバル時代で日本の人口は減りますが、世界の人口(特にアジア・アフリカ)は増えていきます。ヨーロッパがこれまで行ってきた失敗を繰り返すのでは意味がありません。そこを教訓に日本はアジア諸国、アフリカ諸国とどのような関係を作っていくのかということが、やはり重要になると思います。
そういった意味もあり、もう1つ新しく学部と学科を作りました。国際文化学部のグローバルスタディーズという学科の中には、共生社会の在り方や、アフリカ・アジアの文化の視点、あるいは今後のグローバル関係をどう考えるのかという内容の専攻を取り入れています。やはり、この21世紀では、それぞれがグローバル化して海外に行くという話だけではなく、自分が何者かを知ることが重要で、しっかりと自分の足元を見ることが出来る人がグローバルに飛び込んでいけます。しかし、そうではない人はグローバル化に流されるだけになってしまいます。そのため、グローバル化の波が来た時に、自分にとって何を残すべきか、何を変更すべきか、他の人とどの部分を一緒に共同で取り組むべきかということがしっかりと見えないといけないと思ったため、上記のような内容が学べる学部にしました。

あと大きな構造変化に関しては、京都精華大学が出来て以来あまり行ったことがないのですが、大学を卒業するために必要な124単位の内、50単位全てを共通教育にしました。京都精華大学のスピリッツをもう少し広げて、学部の垣根を超える授業を増やしていくことが目的です。今までは、その学部に入ったらずっとその分野のことばかりを教えていたため、他の学部が何をしているのか分からない状態でした。実はよくあるのですが、どの学部にも似た授業があります。例えば〇〇心理学という科目であれば、学部ごとに設けています。しかし、学部を超えてミックスすることで、学生同士はそれぞれの視点から心理学をどう見るのかが見えてきます。あとは、周りに大学として心理学を1つの枠組みで教えていくということが重要だということも伝わります。そのため、実は元々バラバラに存在していたものをまとめて、それぞれの学部が持っている基礎学問を共通で出しました。京都精華大学に入ったからには、国際文化学部でもマンガの基礎やデッサンの基礎、あるいは音楽の基礎を学ぶことができるわけです。その結果、基礎を共通化することによって、1つの大きな共同体として京都精華大学を一体化することが期待できます。
もう1つ、私たちの新しい改革の中でこれから1番重要になってくるのはリカレント(社会人の再教育)です。日本ではあまりありませんが、他の国ではよくあります。1単位でも良いです。例えば「この分野だけもう少し勉強したい。」と、社会人でも気づくことは多いと思います。やはり、この部分は大学として学ぶ場・機会を提供することは重要だと考えていますので、進めていきたいと思います。
あとは、インターンシップと社会実践科目を必修にしました。短い期間ではなく、インターンシップに一定期間に行くことで評価するという方法に変えました。こちらを卒業要件にしたことは大きな変化です。 そして、もう少し他学部の内容に興味を持った学生には、マイナー制度も取り入れました。2単位を取るのは誰でも出来ますが、10単位までパッケージで取ることが出来ます。そうすると、卒業する時には自分のメジャーの学部で卒業することになりますが、マイナーの学部の卒業証書も貰えます。例えば、建築を学んだ人がマンガを経由して社会に出ていく時に相当スケッチが上手になっていたり、どの村を調べてもすぐに調査内容をマンガにすることができるようになっていたりして、他学部で学んだことが活かせる機会があっても良いと思ったのです。この点は、京都精華大学で学ぶ大きな利点です。

1 2 3 4

お問い合わせ