キャリアパワー

  
capo vol90

派遣利用のメリットとは

この数年間、大学の人材が多様化してきた中で職種・職位が増えてきています。やはりその中でも、もし派遣や嘱託などがなかったらどうなっていたのかを考えることがあります。今は大学の財政が不安定なところもあり、専任には手を出せない部分があります。どの大学も同じかと思いますが、一旦専任で雇った場合に、もし人事が失敗したとしても取り返しがつきません。実は教員もそうですが一定期間お付き合いをしていくということが重要であるのと同時に、人材派遣は多様な人材の中から自分がピンポイントで必要な人材を選べるという点が大きいと個人的には思っています。
当然ながら大学は大きな共同体として見られているため、会社とは違い、専任であろうが嘱託であろうが派遣であろうが同じ空間に入ると、雇用体系は違いますが、同じファミリーになります。そのため、どのように区別していくのかということは難しい問題でもあります。
その他難しいと感じる点は、パフォーマンス的に派遣の人達はどう関わっていくのかという点です。私もこの20年間派遣関係を見てきた中で、このあたりは難しいと感じています。指示をする際にスタッフは当然ある契約の枠で入って来ていますが、仕事の時はそれだけではなく、どんどん物や要求が変わっていきます。その時どうするべきか。昔利用していた時に、1番難しかったことは指示をする時に毎回毎回キャリアパワー経由で連絡をして新しい指示をすることになり、ルーチンは行うけれども、指示が変わると連絡しなければならなくなりました。しかし、新しい指示は瞬間的に出てくるため、その辺りの柔軟な部分、グレーゾーンな部分、人間関係などの曖昧な部分は残しておいても良いのではないかと思いました。派遣は大変合理的に使われているため、その合理性が時々仕事のパフォーマンスと効率を悪くすることがあるということは、私は別途認識しています。
ただし、派遣があることによって私たちは多様な人材をすぐ集めること出来ています。あと、やはりこちらの要求通りに人が派遣されてくるところがメリットだと感じています。自分達で公募して雇うと必ずしも要求通りの人が来るとは限りません。やはり、普通に雇うとそういったところの調節は難しいため、派遣のアドバンテージは沢山あると思っています。派遣で雇って、とても相性が良く、そのまま派遣から嘱託に変わっている人もおられるため、派遣という段階はとても重要だと捉えています。派遣の段階を踏んで、ずっとこの人と一緒に仕事したいと思えるかどうかです。そのため、やはり派遣はこの先もずっと必要なものだと思っていますし、ピンポイントで仕事が出来る点は大きなメリットかと思います。

今後、人材派遣に対して期待すること

今こちらがお伝えしている人材が全てその通りに来るかというと、そうではないこともあり難しい部分です。人選に時間がかかることもあると思います。皆さんのデータバンク、人材バンクにどれくらいの人達がいらっしゃるのか分かりませんが、私達がこれから多様な人材を求めていく中で外国の人の雇用は重要だと考えています。
やはり、よく苦しむのはこの部分で、国際的な学会を期間限定で行う時は外国語を話す必要があります。その時に、日本人が外国語を話すというパフォーマンスと、外国人が外国の人と対応するというパフォーマンスでは、やはり違いが出てきます。日本人はいくらその国の言葉が話せても、日本的な視点で見てしまいます。日本的な真面目なところがありすぎるため、結構海外とやり取りをする過程で負担になってしまう人が多いです。その時に同じ文化圏の人がいると、話が全然違ってくるのではないかと思うことがあります。そのため、日本はプロセスで恐縮に思いながら、頭を下げながら進めていきますが、場合によっては頭を下げたらやられてしまうこともあります。これからの国際学会や国際的な場では、多様な人材の派遣が必要だと思います。今、人材派遣でそのような取り組みを始めている企業もあります。海外の若い人達を呼んできて、1年間研修をしてもらって、必要な場所に派遣をするという取り組みです。私もそういったところに呼ばれて、講演をした経験もあるため、このような取り組みは結構増えてきています。当然、色んな矛盾が出てくると思いますが、このように次のステップに行った方が、需要があるのではないかと考えています。特に昨年は、たまたまオリンピックが出来ませんでしたが、万博やオリンピックなど、日本では色々な国際イベントが開催され、期待されています。それに反して、日本は国際的になっていない部分があります。国際的なイベントの際に、スタッフを日本人に限定してしまうよりも、色んなスタッフがいた方が円滑に進むのではないかと思っています。
京都精華大学も派遣されてくるスタッフは、国籍問わず日常コミュニケーションが出来れば良いということですので、もっと色んな人がいても良いのではないかと思います。やはりまだ、日本の人材派遣関係は外国人の登録が少ないと感じています。京都精華大学でも27%の留学生がいます。おそらく他の大学でも増えているため、そういった留学生たちも派遣対象であっても良いのではないかと私は思っています。

これまでのご経歴

日本に来てちょうど30年です。その前は高校卒業直後から6年ほど中国に住んでいました。専門建築で建築を勉強してから日本に来ました。日本でも最初の10年間は京都大学で過ごして、博士課程終了した後、研究員になりました。2001年から京都精華大学に来ました。これまでは海外に行く事が多く、色んな生活環境を調査して、色んな人と喋る機会がありました。私自身も新しい場所で、どんな人がそこにいて、どんなことをしているのかということを知ることが好きですので、半分趣味で半分は調査・研究として、よく海外に行きました。

偶然のめぐり合い

最近は全くしていないですが、長い間サッカーをしていました。サッカーを中心にスポーツ全般をしたり、観ることが大好きです。そのため、観る時はいつも歓声が大きくなってしまいます。もちろん、日本のサッカーも観ています。私は昔、学生の時に6年間ほど日本の地域スポーツ少年団の中学生サッカー部の監督を担当していたことがあります。ちょうどその時は、Jリーグがスタートするかしないか、スポーツ少年団がクラブ化していくという時でした。これに関連して最近、偶然起きた出来事があります。その当時キャプテンをしてくれていた子がいたのですが、最近「あれ?似ているな。」と思う顔の人がいて、蓋を開けてみたら京都精華大学のバスの運転手がその当時のキャプテンだったのです。京都はとても狭いと感じた出来事です。
結構、学長になってからは同様の出来事が多いです。面接で偶然ゼミの卒業生に会い「あれ。なぜここにいるの。」とお互いに驚いたケースもあります。他にも、大学時代の後輩が、いつの間にか京都精華大学の先生になっていて驚いたこともあります。学長同士の中でもありました。学長会議の時に、私の隣に別の大学の学長が座っておられ、ふと、その学長が仰っていたことですが「昔国際法のディスカッションをした時に討論し合っていた学生がいて、その学生のことがとても印象に残っている。でも体が細くて、アフリカ出身で確か、マリから来た留学性で工学部だった。」と。この話を聞いて、その時期だとその条件に当てはまる学生は私しかいないと思い、「もしかしたら私のことではないですか。」と聞いて、偶然昔出会っていたことが判明したこともあります。京都ではこのような偶然の再開は本当に多いです。普通にご飯を食べに行って外国人のふりをしていたら、知らない人に「あれ、精華の学長…サコさんですよね。」と聞かれることも多くなりました。学生でもあります。オープンキャンパスに来た高校生が、「私の親がサコさんのことを知っていて、毎週留学生のパーティを開いていましたよね。うちの親はずっと差し入れをしていました。」と言うのです。確かに学生時代、パーティを頻繁に開いていたことがあります。このように知り合いの子供世代でも偶然出会う機会も多くなりました。
話は変わりますが、学生時代私の部屋が狭かったため、下宿先の大家さんが気を遣って「君の場所は狭いので僕の家でパーティして良いよ。」と言って下さったことがありました。それから、私はパーティを開くようになり、最初は5~6人でスタートしたのですが、毎週開くうちに、どんどん仲間が増えていきました。その輪は多岐に渡り、仲間の兄弟やアルバイト先の人達まで色んな人達を呼ぶようになりました。次第に5~6人から10人になり、15人になり、気が付いたら毎週人の家に30人くらいの人を連れて行っていました。開催場所の大家さんは「20~30人もなったら流石に分からへんね。」と仰っていました。その時私は、本当に大家さんは参加者の顔が分からないのだろうと思っていたため、参加者全員の顔写真を撮り、A3の用紙に貼って、それぞれの名前を書いて大家さんに渡しました。本気で分からないのだろうと思っていたのですが、実は大家さんの言葉を訳すと「もういい加減にしなさい。」という日本語だったのです。私にはそれが全く通じておらず、本当に悩んでいるのだろうと思っていました。全員顔写真を貼り「この人は日本人で京大の2年で、この人はミャンマー人です。」と1人1人を丁寧に紹介していました。直接言って下さったら良かったのですが、遠回しに話されていた意味が伝わっていなかったという昔の出来事です。
他にも、このような出来事もありました。サッカーの観戦をしていた時に賑やかでしたので、何回か警察を呼ばれたことがあったのですが、最近、別の学長会議に行った時にある学長が挨拶に来られたのです。「お世話になっております。」と言われたのですが、その方のお世話になった覚えが全くなかったため、詳しく聞いてみますと「実はサコさんの斜め向かいに住んでいる人が私の兄です。」と仰っていました。それを聞き、「警察を呼んだのはこの方の兄だったのか。」と気が付きました。「兄からずっとサコ学長の話を聞いていて、実はサコさんが学長になって1番驚いたのはうちの兄です。」と仰っていました。近所にわざわざ私の方から研究しているとお伝えする機会も無かったため、恐らく私が何をしている人なのか分からなかったのだと思います。とにかく彼は私に対して、毎回人を集めて、パーティを開いている人で、サッカーの時は賑やかという印象が強かったのではないかと思います。しかし、ある日急に何をしているのか分からなかった人が学長になり、本当に1番驚いたと思います。

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