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「給与デジタル払い」来年4月解禁 キャッシュレス化と消費の利便性を促進

キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「給与デジタル払い」が、来年4月1日に解禁されます。厚生労働省は、労働基準法第24条の省令改正や施行規則策定などの準備を急ピッチで進める一方、事業者指定や指導監督を含めた運用開始後の組織体制づくりを急ぐ構えです。政府が実現に向けた法整備の議論を開始してから約2年。給与を払う企業、手にする労働者、加えてサービスを提供する資金移動業者にも大きな変化を迎えることになります。

「給与デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にする仕組みです。実現するためには、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正が必要で、現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」を加えなければなりません。

金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービス事業者は85社(2022年8月末現在)あり、大手では「PayPay(ペイペイ)」や「d払い」など。解禁する場合には厚労相が安全性などの基準を設けて指定します。議論の中で、指定事業者の経営体力などのハードルが数段階上がったこともあり、指定される資金移動業者は一桁台に留まる見通しです。

上限は100万円、破綻時は全額保証

「労働者の同意」「資金移動業者の指定要件」「指定・指定取り消し」の3つの視点を中心に、議論の中で厚労省は課題や懸念を払しょくするための規定・基準、ルールなどを構築してきました。

資金移動業者に課せられた主な運用ルールとして、
(1)賃金支払に係る口座残高の上限額を100万円以下に設定。100万円を超えた場合は速やかに100万円以下にするための措置を講じる
(2)破綻などにより口座残高の受け取りが困難となったとき、労働者に口座残高の全額を速やかに弁済する
(3)最後に口座残高が変動した日から、少なくとも10年間は労働者が当該口座を利用できる措置を講じる
(4)賃金支払に係る口座への資金移動が1円単位でできる措置を講じる
(5)ATMを利用すること等により、通貨で1円単位の受け取りができ、かつ、少なくとも毎月1回はATMの利用手数料の負担なく賃金の受け取りができるようにする
などが挙げられています。

こうしたルールでの運用開始を前に、企業側は「中小企業の送金の手数料や活用の際の負担を軽減してほしい」と指摘。労働者側は「支払われた賃金の安全性が担保されるよう厚労省や金融庁の体制づくりが急務」と注文を付けています。

「給与デジタル払い」は働く現場に広がっていくのでしょうか。労働経済に詳しい識者からは「月給固定が染みついている層ではなく、パート・アルバイト、短期派遣などスポットで働くゾーンにとっては、常時多彩なキャンペーンを展開している決済アプリに全額払いこんでもらうといったニーズが浸透しやすい」と分析。資金移動業者もそうした行動様式を念頭に、パート・アルバイトを多く抱える企業や派遣元事業者への接近または連携打診に乗り出す模様です。

また、金融サービスと情報技術を結びつけた革新的な動きを指す「フィンテック」の動きが、国際社会の中で立ち遅れている日本において、相応の刺激になってさまざまな市場を揺り動かすものと期待されています。

提供:アドバンスニュース

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