政府は6月下旬、「経済財政運営と改革の基本方針2023」(骨太の方針)と「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2023改訂版」を閣議決定しました。骨太の方針では岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の加速を鮮明にし、三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」を強化します。具体的な施策のキーワードとなっているのが学び直しと能力向上に結びつける「リスキリング」です。
骨太の方針は、「マクロ経済運営の基本的考え方」「新しい資本主義の加速」「我が国を取り巻く環境変化への対応」「中長期の経済財政運営」「当面の経済財政運営と来年度の予算編成に向けた考え方」の全5章で構成され、このうち最も注目されているのが「新しい資本主義の加速」に盛り込まれた「三位一体の労働市場改革」です。ここで言う「三位」は、(1)リスキリングによる能力向上支援(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入(3)成長分野への労働移動の円滑化――を指しています。
それぞれの具体的な動きとして、
(1)のリスキリングは、企業経由が中心となっている在職者への学び直し支援策を5年以内に効果検証し、半分以上が個人経由での給付が可能となるよう直接支援を拡充します。併せて、教育訓練給付の拡充や教育訓練中の生活を支えるための給付と融資制度の創設を検討。5年で1兆円の「人への投資」施策パッケージのフォローアップと施策の見直しを実施するほか、雇用調整助成金について休業よりも教育訓練による雇用調整を選択しやすくなるよう助成率の見直しを進めます。
(2)の職務給(ジョブ型人事)の推進は、人材確保の目的や配置・育成・評価方法、リスキリングの方法、賃金制度、労働条件の変更と現行法制・判例との関係などについて事例を整理。個々の企業に制度導入を促すため、中小企業の導入事例も含めて年内に事例集を取りまとめます。
(3)の労働移動の円滑化は、失業給付制度において自己都合の離職で失業給付を受給できない期間に関し、失業給付の申請前にリスキリングに取り組んでいた場合は会社都合の離職と同じ扱いにするなど、自己都合の要件を緩和する方向で具体的な設計を行います。また、自己都合退職の場合の退職金の減額といった労働慣行の見直しに向けた「モデル就業規則」の改正や、退職所得課税制度の見直しに着手。さらに、求職・求人に関して官民が有する基礎的情報を加工して集約・共有し、キャリアコンサルタントがその基礎的情報に基づいて働く人々のキャリアアップや転職の相談に応じられる体制整備に取り組みます。
こうした方針に呼応して、労働市場改革とリスキリングをキーワードにした具体的な新規事業はスタートしています。労働者派遣事業者と民間職業紹介事業者を対象とした経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」で、「個人に対するキャリア相談」「リスキリング」「転職」までを一体的に支援して、企業間・産業間の労働移動の円滑化を狙っています。
提供:アドバンスニュース
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