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加速する外国人就労、「特定技能」「特定活動」の対象拡大 「育成就労」創設へ

構造的な人手不足が深刻化する中、外国人の就労拡大に向けた在留資格の拡充が加速しています。今年に入って政府は、「特定技能」の対象に自動車運送業や鉄道など4分野を追加するほか、国境を越えて移動しながらIT関連の仕事をする「デジタルノマド」と呼ばれる人材に「特定活動」を与える方針を固めました。これらの在留資格拡充は3月までに閣議決定や省令・告示の改正を進め、早急に運用につなげたい考えです。また、注目度の高い「技能実習」に代わる「育成就労」創設については、3月中旬に出入国管理・難民認定法と技能実習法の改正案を国会に一括上程し、4月の審議入りを目指しています。外国人就労を巡る一連の流れを整理します。

<特定技能:創設以来初の分野追加、「2024年問題」対応> 
中長期的な外国人の受け入れを目的とする「特定技能」は、2019年4月の創設から5年が経過。現在、農業や漁業、外食業、介護、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野(2022年統合)など計12分野で運用していますが、初めて対象に自動車運送、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加します。

「特定技能」には、相当程度の知識・経験を要する最長5年滞在の「1号」と、熟練した技能を持ち永住も可能な「2号」があり、今回の「1号」拡大は制度創設以来初めてとなります。追加される自動車運送は、バスやタクシー、トラックの運転手などを想定。4月から運送業などの時間外労働の上限規制に対する猶予が切れ、人手不足や輸送能力の低下が懸念される「2024年問題」を迎えますが、政府は将来も見据えて分野拡大を急いでいます。

鉄道については、車両製造や運転士、駅員などの業務を加えたいとの要望が業界から挙がっています。「技能実習」に代わる「育成就労」創設の法整備が進んでいますが、この「育成就労」と「特定技能」は対象分野をそろえる方針であることから、「育成就労」にもこれらの分野が含まれていくと見込まれます。

<特定活動:6カ月の滞在と就労許可、優秀な人材呼び込み>
「特定活動」は、既存の在留資格のいずれにも分類できない活動に従事する外国人に与えられる在留資格。コロナ禍の緊急対応で弾力的に運用されることもありますが、本来は優秀なIT人材による新たなビジネス創出なども期待されています。今回、政府は「デジタルノマド」と称される人材を対象に「特定活動」を与える方針です。一定の条件を満たせば6カ月の滞在と就労を認め、優秀な外国人材を呼び込んで、国内の消費拡大にもつなげたい考えです。

ITを活用して世界各地を渡り歩きながら働く「デジタルノマド」は、リモートで場所を問わず働ける点が特徴。フリーランスや海外企業に籍を置く人が多く、今回の拡充で海外企業から報酬を得るエンジニアらが日本で活動する場合などをイメージしています。取得要件は(1)ビザ免除の対象で、日本と租税条約を締結する国・地域の国籍を有する(2)日本滞在期間を含めて年収が1000万円以上(3)民間医療保険に加入――など。配偶者や子どもの帯同も認める見通しです。
 
<育成就労:「転籍(転職)」は激変緩和措置、施行期日が焦点>
技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を兼ねた「育成就労」を新たに創設――。昨年11月に取りまとめられた政府の有識者会議の報告書を踏まえて、法務省を中心に法整備の準備が急ピッチで進んでいます。具体的には、入管難民法と技能実習適正化法を改正し、現在の「監理団体」も「監理支援機関」に改称して許可基準を改める模様。改正法案は2月の閣議決定、3月の国会提出、4月の審議入りを目指します。

国際社会から人道的批判もあった「技能実習」に代わる外国人受け入れの新制度となります。「育成就労」は3年間の在留が基本。熟練していない外国人労働者を確保して、即戦力の人材と位置付けている「特定技能1号」の水準まで「育成」して“つなげる”ことを目的としています。その後、より高レベルの熟練技能が求められる「特定技能2号」の試験に合格すれば、家族帯同の無期限就労が可能で、一連のステップを通じて「永住の道」が開かれることになります。

技術移転を名目とした「技能実習」では、同一職場で計画的に技能を学ぶとの考えに基づき、職場を変える「転籍(転職)」が原則3年間にわたって認められていませんでした。「育成就労」で新たに認める本人意向の「転籍」の制限期間は、一般の労働者と同等に近い権利として「1年」としますが、激変緩和の観点から個々の産業分野によっては当面「1~2年」の範囲内で設定することを認めます。転籍前の受け入れ企業が支出した初期費用などについて、正当な補償を受けられるようにするための仕組みも導入する予定です。

4月以降の国会審議では、国の根幹となる政策だけに与党単独ではなく、一定の野党の賛成も得て成立させたいため、何らかの修正案をのむ形で6月に着地となる公算が高いとみられます。また、改正法案が成立した場合、対象業務の見直しや新制度の周知期間などを考えて、最終的に公布から何カ月以内の施行とするのかも着眼点のひとつとなります。

提供:アドバンスニュース

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