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「骨太の方針2024」、労働市場改革の継続と断行 全世代型リスキリングを促進

政府は6月下旬、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針)を閣議決定しました。骨太の方針には、デフレからの完全脱却を主眼に政策を総動員して「賃上げを後押しする」と明記。23年版に引き続き、全世代型リスキリング(学び直し)の促進などを含む労働市場改革を断行するため、「国民会議」の開催を検討します。キャリアアップ支援や企業間・産業間の成長産業への労働移動を総合的に担える人材サービスの役割と責務がさらに高まる見通しです。

骨太の方針2024は、第1章・成長型の新たな経済ステージへの移行、第2章・社会課題への対応を通じた持続的な経済成長の実現、第3章・中長期的に持続可能な経済社会の実現~「経済・財政新生計画」、第4章・当面の経済財政運営と次年度予算編成に向けた考え方─の全4章で構成。23年版の「継続・強化」を基軸としています。

このほか、特筆されるのは25年度の国・地方を合わせたプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化を目指すことを明記。予算編成においては「日本経済が新たなステージに入りつつある中で、経済・物価動向等に配慮しながら各年度の予算編成過程において検討する」との文言を盛り込み、25年度から27年度までの3年間はこれまでの歳出改革努力を継続する方針を示しました。

政府が最も重要視している「労働市場改革」の施策をまとめた第2章を詳しく読み解くと、(1)賃上げの促進として、「最低賃金1500円の早期達成」「非正規の正規転換」「被用者保険の適用拡大」「男女間賃金格差是正」(2)三位一体の労働市場改革として、「全世代のリスキリングの拡充」「ジョブ型人事(職務給)導入のための指針作成」「成長分野への労働移動の円滑化」(3)価格転嫁対策として、「サプライチェーン全体での構造的な価格転嫁の実現」「下請法改正の検討」――などを掲げています。

「労働市場改革」と「新しい経済ステージ」の両方に絡む目玉政策として打ち出してきたのが「全世代型リスキリング」です。現状の課題として、社会や企業において個人に求められる知識・技術・技能が短期間で目まぐるしく変化し、生涯を通じて新たなスキル獲得に努めることが必要になったと分析。しかしながら、日本は就職すると学び直し慣行が薄くなり、「リスキリングに挑む人の割合や実施時間は先進諸国と比較して低い」と指摘しています。

このため、本年度から25年度にかけて、教育訓練給付の拡充・拡大を推し進め、団体検定の活用や給付率の引き上げ、教育訓練休暇中の生活を支える新たな給付金を創設。また、在職期間中のリスキリングを支援するほか、全世代型リスキリングを進めるために「国民会議」を開催し、広く機運を醸成していく方針です。

要するに、若年層のビジネスパーソンやデジタル化で仕事を失う可能性があるホワイトカラーに、政府が新たな専門知識の習得やリスキリングを支援していく格好で、これまでの「自主的にスキルアップを」という“常識”が変わります。そして、年功序列型の「職能給」から企業内で職務を明確にして成果重視で処遇する「職務給」、いわゆる「日本版ジョブ型」の拡大を促す考えで、先行導入している20社の取り組みを紹介する事例集を今夏に公表します。

生産性向上と実質賃金の上昇につながる「リスキリング」「ジョブ型の導入」「円滑な労働移動」は、政府の肝煎りの政策である「三位一体の労働市場改革」の軸であり、この政策が成果を発揮できれば、現在の閉塞感を打破できる起爆剤になるかも知れません。それは、ひっ迫する財政状況の改善や懸案となっている社会保障制度の見直しにプラスに作用するとみられます。

■経済財政運営と改革の基本方針2024
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2024/2024_basicpolicies_ja.pdf

提供:アドバンスニュース

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