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労働者派遣契約は中途解約できる?リスク・注意点を解説

「派遣契約を解除したいが、想定されるリスクが分からない…」

上記のように、派遣社員の契約を途中解除したいと悩んでいる人事担当の方へ。
派遣契約には、労働者派遣法や労働契約法など、法令が複雑に関係しています。
そのため、法令に違反しないか、想定されるリスクを検討する必要があります。

今回は、派遣契約を途中解除できる2つのケースを徹底解説。
また、リスクを避けるために注意すべき点や、具体的な対応策も紹介します。
最後まで読んでいただき、派遣契約についての理解を深めましょう。

<目次>
派遣先都合の契約解除は訴訟リスクが生じる
派遣先が契約を途中解除できる2つのケース
1.会社に倒産リスクがある場合
2.派遣社員に問題がある場合
派遣契約の解除に伴うリスクを避ける4つのポイント
1.遅くとも30日前に予告をして猶予期間を設ける
2.派遣元会社と話し合い合意を得る
3.派遣会社に途中解約の根拠を提示する
4.派遣元に損害賠償を支払う
契約解除の際に派遣元が対応すべき3つのポイント
1.新たな就業機会を提供する
2.派遣社員に休業手当を支払う
3.最終的に労働基準法に沿った対応
Q1,派遣社員が妊娠・出産したら契約解除できる?
Q2,体調や勤務態度だけで契約解除できる?

派遣先都合の契約解除は訴訟リスクが生じる

派遣契約を途中解除する場合は、以下の2点を確認しましょう。

●派遣元と派遣先の間で締結した労働者派遣契約
●派遣社員と派遣元との雇用契約

労働者派遣法により、派遣先からの一方的な契約解除は、原則として認められていません。
また、派遣契約においては、労働契約法、労働基準法などの法令も関係します。
法令から外れないよう、正しい手順を理解しましょう。

参照:労働者派遣法第29条の2

派遣先が契約を途中解除できる2つのケース

派遣先が派遣契約を解除できるケースは以下の2点です。
●会社に倒産リスクがある場合
●派遣社員に問題がある場合

派遣契約を途中解除するには、社会通念上認められる理由が必要です。
それぞれ、詳しく解説していきます。

1.会社に倒産リスクがある場合

派遣先に倒産リスクがある場合の契約解除は、正当な理由として認められます。
倒産すると派遣料金を支払えなくなるため、派遣元と派遣社員に対する不利益を防ぐためです。

ただし、契約を解除するには、理由を具体的に説明する必要があります。
現状の経営状態や資金繰りなど、しっかりとした理由を示さなければなりません。
状況によっては、派遣元に経費の削減案や再建の見通しも説明する必要があるでしょう。

2.派遣社員に問題がある場合

派遣社員に問題があり、派遣先に重大な損失を与えた場合は契約を解除しても問題ありません。
具体例としては、内部機密の漏えいやハラスメント行為などがあります。

派遣契約に解除条項が記載されている場合は、すぐに契約解除の申し入れができます。まずは契約書を確認しましょう。

しかしながら、派遣社員の能力不足だけでは、契約の途中解除は認められていません。
派遣社員の能力が不足している場合は、社内教育やOJTなどを施す必要があります。

派遣契約の解除に伴うリスクを避ける4つのポイント

派遣契約の解除には、以下の手順が必要です。
●遅くとも30日前に予告をして猶予期間を設ける
●派遣元会社と話し合い合意を得る
●派遣会社に途中解約の根拠を提示する
●派遣元に損害賠償を支払う

各ポイントを詳しく解説します。

1.遅くとも30日前に予告をして猶予期間を設ける

派遣先が途中で解除する場合、直前の通告はNGです。
遅くとも、契約解除する日の30日前に派遣元に伝える必要があります。

派遣社員は契約終了後の収入や生活が不透明になるリスクを背負います。
次の仕事探しや生活費の確保など、契約解除後の準備もあるため、30日前には派遣元に伝えましょう。

参照:派遣先が講ずべき措置に関する指針 (派遣元指針第2の6(2)

2.派遣元会社と話し合い合意を得る

契約を解除したい場合には、派遣元に説明して合意を得る必要があります。
加えて、契約を解除する派遣社員に対してのサポートも求められます。
子会社や関連会社など、新しい職場を提供できるのか検討してください。
派遣元と話し合うために、契約解除の理由と可能な対応案をまとめておくべきです。

派遣元との話し合いでは、冷静かつ誠実に対応してください。
派遣元の意見や要望も聞く姿勢を見せると、話し合いもスムーズに進むでしょう。

参照:派遣先が講ずべき措置に関する指針 (派遣元指針第2の6(1) )

3.派遣元会社に途中解除の根拠を提示する

派遣社員の契約を途中解除する場合、派遣先は根拠を提示する必要があります。
派遣元としても原因がどこにあるのか、分析する必要があるからです。
派遣元から理由を尋ねられた際に、説明できるようにしておきましょう。

また、正当な理由を提示できない場合、後に訴訟されたケースもあります。
リスクを避けるためにも、説明できるだけの根拠は整えておいてください。

参照:派遣先が講ずべき措置に関する指針 (派遣元指針第2の6 (5))

参照:興和株式会社事件・大阪地決平成 10・1・5 労判 732 号 49 頁

4.派遣元に損害賠償を支払う

派遣先が派遣元に損害賠償を支払うケースも考えられます。
具体的には、派遣先が派遣社員に対して新たな職場を確保できず、休業させる場合が該当します。

結果的に、派遣元が派遣社員に解雇通知を出す余裕がなくなる可能性も否定できないからです。
実際のところ、就業先を失った派遣社員を雇用し続けるのは、難しいものがあります。
派遣元から請求される賠償額は、休業手当相当分よりも高額になると考えられます。

契約解除の際に派遣元が対応すべき3つのポイント

派遣契約を解除する際に派遣元が対応するべきポイントは以下の通りです。
1.新たな就業機会を提供する
2.派遣社員に休業手当を支払う
3.労働基準法に沿った対応

派遣元と派遣社員の雇用契約は引き続き継続します。
そのため、派遣元は派遣社員に配慮した処置を心がけましょう。

1.新たな就業機会を提供する

派遣社員の契約を途中解除する場合、派遣元は新たな就業機会を探す努力義務があります。
派遣先には「新たな就業先を探す義務」があり、派遣元は「努力義務」にとどまります。
ただし、派遣元は派遣社員と直接の雇用関係があるため、より重い責任がある点は押さえておくべきです。

2.派遣社員に休業手当を支払う

契約期間中に派遣社員を休ませる場合には、休業補償の支払いが必要です。
労働基準法26条により、平均賃金の60%以上を休業補償として支払う義務があります。

なお、派遣元は派遣先に対して、休業補償相当分の賠償額を請求可能です。
実際に休業手当+社会保険料などを、派遣先に請求しているケースが増加しています。

3.労働基準法に沿った対応

どうしても新たな紹介先が見つけられない場合は、労働基準法に沿った対応が必要です。
無期雇用であれ有期雇用であれ、解雇する際には相応の理由が必要となります。

また、労働組合法や男女雇用機会均等法など、関連する法令や規則も確認のうえ検討してください。
それぞれの法律の適用範囲を確認したうえで、適切な対応を心がけましょう。

Q1.派遣社員が妊娠・出産したら契約解除できる?

妊娠・出産を理由とした、途中解約は違法とされています。
派遣社員や正社員を問わず、産前産後休業期間中とその後30日間の解雇はできません。
時差通勤や勤務時間の短縮などの措置を取り、産前・産後の休暇は必ず提供しましょう。

Q2.体調や勤務態度だけで契約解除できる?

単純な体調不良や勤務態度だけを理由に、契約解除はできません。
まずは、注意や指導をして改善を求める必要があります。
契約解除するには、体調や勤務態度ではなく誰しもが納得できる理由が必要でしょう。

メタディスクリプション
「業績の悪化から、派遣契約の解除を検討したい」「実際の勤務態度など、派遣会社から聞いていた働く様子に違いを感じる」このような悩みを持つ方はいるのではないでしょうか?当記事は派遣契約の途中解約について、注意点や具体例をご紹介します。

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