CATEGORY

2023年度予算の概算要求、「人への投資パッケージ」「円滑な労働移動」など

2023年度の政府予算案編成で、厚生労働省の概算要求額は33兆2644億円で実質的に過去最大となりました。こども家庭庁へ事業を移管しても、今年度当初予算と比べて6340億円増加。厚労省は「成長と分配の好循環に向けた『人への投資』」を政策の柱に据える方針です。新規事業などを中心に、来年度の雇用・労働分野の施策を点検します。

厚労省は概算要求で、「新しい資本主義」の実現に向けた労働分野の旗印に(1)人への投資パッケージ、円滑な労働移動の推進(2)多様な人材の活躍促進(3)多様な働き方への支援、最低賃金・賃金の引き上げに向けた事業者への支援、労働者・フリーランスの働く環境の整備――を掲げました。

(1)の施策としては「企業のデジタル人材の育成」「キャリアアップ助成金による正社員化」「在籍型出向を活用したスキルアップ支援」など。(2)では「男女の賃金差異の開示を通じた女性活躍」「中小企業をはじめとした障害者の雇い入れ」「外国人労働者の雇用管理と労働移動の把握」など。(3)では「働く人のワークエンゲージメントの向上」「最低賃金引き上げの業務改善を実施した事業者への支援」などを掲げています。

本年度から継続する事業もありますが、中身を分析するとコロナ沈静化後のウィズ・コロナを意識した攻めの施策が目立ちます。そして、将来を見据えて硬直化している雇用・労働のルールを揺り動かそうとする姿勢も垣間見えます。

概算要求の事業に加えて総合経済対策の内容も

また、10月28日に取りまとめた政府の総合経済対策では、重点項目として「人への投資と分配」を挙げ、「労働移動(転職)の円滑化」「リスキリング(学び直し)の促進」「構造的な賃金引き上げ」を示しています。来年度は概算要求に並べた事業に加え、総合経済対策の方針と内容も反映される見通しです。

「守り」の施策となる「在籍型出向支援」では、新規事業として「産業雇用安定助成金によるスキルアップ支援コース」を展開します。在籍型出向を実施する事業者に出向労働者の賃金の一部(中小企業は3分の2、それ以外は2分の1)を最長1年間助成。想定される事例として、自動車関連の工場への出向を通じてモノづくりにおける品質管理と工程改善の手法や考え方を習得するケースなどを挙げています。このほか、各都道府県が実施する業種転換を伴う再就職支援の取り組みに補助金を支給するほか、都市部から地方への移住を伴う再就職支援も後押しします。

女性活躍の事業では、「受講者の特性に対応した教育訓練手法の構築・普及促進事業」(仮称)が新たな試みです。民間から提案を募集した結果、「女性の非正規向けの伴走型IT人材育成プログラム」「中高年ホワイトカラーのセカンドキャリア向けマインドリセット」「管理職向け人材マネジメント研修」など多面的な角度から施策が集まりました。こうした幅広いニーズに対応するため、受講者の特性に合った教育訓練方法をコンテスト方式で募集し、地方自治体と連携して取り組んでいく仕組みです。

「デジタル化の推進、人手不足分野への労働移動の推進」では、全国の生産性向上人材育成支援センター(生産性センター)にDX人材育成推進員(仮称)を配置して、中小企業のDX人材の育成を図ります。また、地域雇用の課題に対応した雇用の実現を目指して各都道府県の取り組みを支援する考えで、地域雇用を再生する企業の事業転換や求職者のキャリアチェンジ、成長分野や人材不足分野の雇用確保と就職促進といった民間人材ビジネスとの連携が不可欠な事業も盛り込まれました。

提供:アドバンスニュース

この記事は役に立ちましたか?

もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。