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4月スタート、法定雇用率2.3%から2.5%に引き上げ 企業の障害者雇用

障害者雇用促進法の施行規則改正に伴い、4月から企業などの障害者雇用の法定雇用率が引き上げられました。企業の場合は2.3%から2.5%になり、対象企業も従業員43.5人以上から40.0人以上に拡大。26年7月からは各2.7%、37.5人以上と段階的に拡大することも決まっています。また、雇用の「質の向上」を重視する動きも活発になってきました。

法定雇用率を単純計算すると、従業員300人の企業の場合、これまでは6人でクリアできましたが、今後は1人増えて7人、26年7月からは8人に増えます。対象企業は「障害者雇用推進者」を選任し、毎年6月1日時点の雇用状況をハローワークに報告。解雇する場合もハローワークに届け出る義務を負います。企業以外では国・地方自治体も4月に2.6%から2.8%、都道府県の教育委員会は2.5%から2.7%にそれぞれ引き上げられました。

一方、これまでは対象外だった短時間勤務者が新たに対象となり、週10時間以上~20時間未満の勤務の場合、精神障害者と重度の身体・知的障害者は0.5人にカウントされます。障害者の中には長時間勤務は厳しいものの、短時間勤務なら就労できる人も多いため、特定の時間に発生する業務や短時間で終わる業務に就いてもらうことで、雇用増と法定雇用率をクリアできるメリットが生じます。ただ、就労支援A型事業所の利用者は算定対象になりません。

このほか、企業側から各種助成金が複雑化してわかりにくいとの指摘があることから、障害者雇用の経験やノウハウのない企業への相談援助、高齢障害者の雇用継続支援、ジョブコーチらによる定着支援の拡充などを強化、資金支援も拡充します。

雇用ゼロ企業、低い定着率などが課題
障害者の雇用数自体は増え続けています。厚労省の「障害者雇用状況」によると、23年6月時点で企業の雇用数は64万2178.0人(前年比4.6%増)と20年連続で増え、実雇用率も12年連続で伸び続けて2.33%(同0.08ポイント増)と法定雇用率を上回りました。近年は精神障害者の雇用が急増しており、23年は13万298.0人(同18.7%増)に達しています。

しかし、全ての企業で雇用が増えているわけではありません。法定雇用率を達成した企業は半数の50.1%(同1.8ポイント増)に過ぎず、残る半数にあたる5万3963社は未達成。しかも、未達成企業のうち、1人も雇用していない企業が3万1643社あり、これらの比率は同法施行以来、ほぼ変わっていません。障害者雇用は、意識の高い企業とやる気のない企業に二極化しているのが実情です。

未達成企業の比率が下がらないのは、法定雇用率を引き上げると、引き上げ前の達成企業でも引き上げ後は未達成企業になるケースもあるためですが、問題は雇用ゼロ企業も容易に減らないことです。その圧倒的多数が従業員100人未満の中小企業で、未達成企業は「不足分の人数×5万円」の納付金を毎月政府に支払わなければなりませんが、100人未満の企業は納付金の対象になっておらず、これがゼロ企業の減らないひとつの要因になっています。

ただ、納付金は達成企業に対する調整金や報奨金の原資になっていますが、未達成は中小企業が多いことから、「資金力の弱い中小企業から裕福な大企業に資金が向かっている」との批判も根強くあります。来年から調整金・報奨金が減額されるのは、こうした理由も背景にあります。

また、就労後の職場定着率の低さも、大きな課題です。高齢・障害・求職者雇用支援機構が17年に実施した調査によると、就労3カ月後の定着率は身体障害者77.8%、知的障害者85.3%、精神障害者69.9%に下がり、1年後には各60.8%、68.0%、49.3%と、精神障害者は半分以下になっていました。精神障害者は障害者枠以外に一般枠でも就職する人が多く、職場の「合理的配慮」がなかったため退職に追い込まれるケースが目立ちます。

打開策として厚生労働省は、好事例の紹介イベントを開催したり、2022年の改正障害者雇用促進法に「雇用の『質の向上』と企業の責務の明確化」を盛り込んで啓発に努めていますが、企業に広く浸透しているとは言い難い状況です。

提供:アドバンスニュース

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