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派遣社員に出張を命じても大丈夫?法的ルールと実務対応を解説

<目次>
導入文
派遣社員の出張が増える背景|多様な働き方と広がる業務
 派遣社員の出張は法律上認められている
 出張を命ずる際は契約書への明記が必須である
派遣社員に出張してもらうため実務フロー
 1.派遣元との事前協議で出張の可否を確認する
 2.本人への説明と同意取得をする
 3.出張業務中の報告・連絡フローを整備する
 4.安全管理と労災対応のルールを明文化する
派遣社員の出張経費の扱いに関するQ&A
 Q1.日当や出張手当はどのように定める?
 Q2.交通費や宿泊費の負担は?
まとめ 派遣社員の出張対応はルールの明確化が鍵

導入文

派遣社員の活用が多様化する現代において、業務の幅は広がり出張をともなうケースも増えてきました。
そんななか、「派遣社員にも出張をお願いしていいのだろうか?」と戸惑う人事担当者も多いのではないでしょうか。

派遣社員を出張させるには、法律上の扱いや契約上の注意点、出張に関する経費処理など、押さえるべき実務対応があります。
そこで今回は、派遣元・派遣先それぞれの立場で必要なポイントを解説していきます。

派遣社員の出張が増える背景|多様な働き方と広がる業務

近年、派遣社員の業務はより専門的かつ、柔軟な対応が求められています。
業務の内容によっては、営業同行や地方拠点への出張が必要な場面も増えてきました。
以下では、出張を命じる法的・契約的なルールを解説します。

● 派遣社員の出張は法律上認められている
● 出張を命ずる際は契約書への明記が必須である

まずは、出張が法的にどのように扱われているのかをみていきましょう。

派遣社員の出張は法律上認められている

結論を述べると、派遣社員への出張依頼は、法律上認められています。
ただし、以下の条件は把握しておきましょう。

労働者派遣法では、派遣先が派遣社員に対して指揮命令できる範囲が「あらかじめ締結された派遣契約の内容」に限定されます。

そのため、契約に含まれている場合に限り、派遣先が業務命令として出張を指示できます。
契約外の地域・業務への出張指示は「契約違反」とされる可能性もあるので、注意してください。

出張を命ずる際は契約書への明記が必須である

派遣社員に出張をさせる場合、派遣契約書や就業条件明示書に「出張を含む業務である」旨を記載しておく必要があります。

具体的には、以下の表現が実務上では有効です。
● 「出張を含む業務あり(全国出張可)」
● 「〇〇地域への出張業務を予定」
● 「出張の頻度・範囲・手当の有無」

明文化は事前に必ず行ってください。
契約外業務のリスクを防ぎ、派遣社員本人との信頼関係も保ちやすくなります。

派遣社員に出張してもらうため実務フロー

派遣社員へ出張を指示するにあたっては、派遣元との連携や社内での準備が欠かせません。

以下では、派遣社員の出張を円滑に進めるためのステップを解説します。
● 派遣元との事前協議で出張の可否を確認する
● 本人への説明と同意取得をする
● 出張業務中の報告・連絡フローを整備する
● 安全管理と労災対応のルールを明文化する

各ポイントを確認し、実務上のリスクを最小限に抑えましょう。

1.派遣元との事前協議で出張の可否を確認する

派遣元の同意がないまま、派遣先が一方的に出張を命じる対応は認められていません。
出張の必要性や条件について、まずは派遣元と十分に協議する必要があります。

確認しておきたい主な項目は、以下の通りです。
● 出張業務が契約範囲内であるか
● 出張の期間・場所・内容
● 経費負担の取り決め

双方ですり合わせをして、実務上の混乱や後日のトラブルを防ぎましょう。

2.本人への説明と同意取得をする

次に、派遣社員本人への説明と同意を取得します。

「契約で出張が含まれている」とはいえ、生活状況や家庭の事情によって配慮は必要です。
無理な依頼にならないよう、出張内容・日程・支給される手当・安全面などを十分に説明してください。

派遣社員本人の納得を得たうえで、出張の段取りを進めましょう。

3.出張業務中の報告・連絡フローを整備する

出張中も派遣社員は、派遣先の指揮命令下にあります。
そのため、業務報告や緊急連絡の体制を明確にしておく必要があります。

例えば、以下の項目を事前に決めておくと安心です。
● 日報や業務報告の提出先
● 緊急時の連絡方法・連絡先の共有
● 担当者が不在の場合のフォロー体制

報告・連絡のフローを整理するだけで、業務の質を維持しやすくなります。
こうした準備の徹底がトラブルへの対応力の向上につながります。

4.安全管理と労災対応のルールを明文化する

出張中の事故やけがに備え、安全管理と労災対応を整える必要もあります。

労災保険の加入や申請手続きは、派遣スタッフと雇用契約を結ぶ派遣元が対応します。
一方で、業務の指揮命令を行う派遣先には、災害発生時の報告義務があります。

派遣元は、万が一事故が起きた場合に「療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号)」の労災申請書類を作成してください。
その際、派遣先は「派遣先事業主」として、発生日時・場所・業務中であったかなど、事実を証明する役割を担います。

連携をスムーズに進めるために、報告の流れや対応範囲を書面にまとめておくと安心です。

派遣社員の出張経費の扱いに関するQ&A

派遣社員に出張を依頼する際、よくある質問をわかりやすく解説します。
出張経費に関する基本的な考え方を順にみていきましょう。

● Q1. 日当や出張手当はどのように定める?
● Q2. 交通費や宿泊費の負担は?

「経費は誰が負担するのか」「どのように精算するのか」といった費用面の対応について、役立てて頂ければと思います。

Q1.日当や出張手当はどのように定める?

日当や出張手当の扱いは、派遣元と派遣先の契約内容によって決まります。
一般的には、実費を負担するのは派遣先で、手当の支給有無や金額の判断は派遣元が行います。

特に、次の項目について、事前に明示しておくと安心です。
● 日当・出張手当の支給有無
● 支給額の基準
● 精算方法(定額か実費か)

「想定と違った」といったトラブルを防ぐためにも、条件は契約書で明確に示す必要があります。

Q2.交通費や宿泊費の負担は?

原則として、出張にかかる交通費や宿泊費などの実費は、業務指示を行った派遣先が負担するのが一般的です。
ただし、派遣元が一旦立て替え、請求書ベースで精算する形式もあります。

そのため、以下の点についても確認しておきましょう。
● 精算書類の形式(レシート提出・経費報告書など)
● 支給時期(出張前・出張後・月末締めなど)
● 支払い方法(給与への加算・現金精算など)

運用方法に関する認識をすり合わせておくと、精算トラブルを防ぎやすくなります。

まとめ 派遣社員の出張対応はルールの明確化が鍵

派遣社員に出張を依頼する対応は、法律上認められており、適切な契約と運用が整っていれば問題なく実施できます。
ただし、出張命令には派遣元との協議や契約書への明記、本人の同意取得など、慎重な準備が欠かせません。

また安全管理や労災対応の体制整備、費用負担の取り決め、報告フローの構築といった実務面にも注意が必要です。
出張対応は、派遣元・派遣先・派遣社員の信頼関係によって成り立ちます。

ルールを共有し、互いの役割を明確にしたうえで、スムーズな運用をめざしましょう。

メタディスクリプション
派遣社員に出張は可能?法的な可否や契約書の記載ポイント、実務対応の流れや経費精算の注意点までをわかりやすく解説します。派遣元・派遣先の人事担当者が押さえておくべきポイントをまとめました。

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