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二重派遣とは|派遣先が知っておきたい基本事項や適用例を詳しく解説

<目次>
導入文
二重派遣とは?法律で定める禁止行為を解説
 適用されるケース|指揮命令権が再派遣先に移動
 適用されないケース|指揮命令権が派遣先のまま
二重派遣が禁止される理由とは
 ①雇用責任が不明確になる
 ➁中間搾取や労働条件が悪化する恐れがある
二重派遣で企業が受ける罰則とは
 ①職業安定法による罰則規定
 ②労働基準法による罰則規定
二重派遣を避ける対策とは?派遣先ができる具体例
【まとめ】二重派遣を正しく理解して企業と労働者を守ろう

導入文

二重派遣とは、企業が受け入れた派遣社員を別企業へ再派遣する行為です。二重派遣は、法により厳格に禁止されています。

本記事では、二重派遣の基本知識や適用例をわかりやすく解説します。既に派遣社員を受け入れている企業はもちろん、派遣社員の受け入れを検討している人事担当の方にも役立つ内容です。

二重派遣の理解が浅いままだと、意図せず二重派遣を行ってしまう恐れがあります。自社の社会的信頼性と労働者の権利を守るため、ぜひ最後までご覧ください。

二重派遣とは?法律で定める禁止行為を解説

二重派遣とは、派遣元から受け入れた派遣社員を派遣先がさらに別の企業へ派遣する行為です。日本では、職業安定法44条や労働基準法6条を根拠に、二重派遣は厳格に禁止されています。

二重派遣とは具体的にどのような行為を指すのか、この項目では以下の仮定を基に解説します。

● 派遣元:X社
● 派遣先:Y社
● 再派遣先:Z社

法律違反になる原因がどこにあるのか、参考にしてください。

適用されるケース|指揮命令権が再派遣先に移動

二重派遣と判断される最も重要なポイントは「指揮命令権がどこにあるか」です。

派遣先Y社が受け入れたX社の派遣社員を、Z社で働かせるケースは二重派遣に該当します。この場合、派遣社員への指揮命令権がY社からZ社へ移るためです。これは、Z社がY社の子会社やグループ企業であっても、別法人である以上は同様です。

また、形式上は請負契約でも、実態が二重派遣とみなされる「偽装請負」にも注意が必要です。例えば、Y社がZ社に常駐させた派遣社員に対し、Z社の担当者が直接業務の指示を出すと偽装請負となります。

適用されないケース|指揮命令権が派遣先のまま

指揮命令権が派遣先のままであれば、問題はありません。一例として、Y社の社員がZ社に常駐してX社の派遣社員を指揮する場合が挙げられます。

このような就業形態は、「IT企業をはじめとする業務の流動性が高い業界」でよくみられるパターンです。指揮命令系統は「Y社→派遣社員」のままであるため適法と判断されます。

二重派遣が禁止される理由とは

二重派遣が禁止される理由は、労働者保護の観点からです。企業が二重派遣を行うと、雇用責任が不明確となり、労働者に不利益をもたらします。このような状態から、中間搾取や労働条件の悪化につながる恐れも否定できません。

労働者保護の観点を理解するため、それぞれ具体的に説明します。

①雇用責任が不明確になる

二重派遣を行うと、労働災害における責任の所在が不明確になるリスクがあります。

一般的な派遣の場合、派遣社員の雇用責任があるのは雇用契約をした派遣元です。しかし派遣先が再派遣を行うと、雇用責任の所在が曖昧になりかねません。万が一労災が起こった場合、責任の所在で争いになる場面も想定されます。

そのため職業安定法第44条では、二重派遣の禁止によって雇用責任を明確にし、労働者の権利を保護しています。

引用元:e-Gov 法令検索 職業安定法 第四十四条
(労働者供給事業の禁止)
第四十四条 何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

➁中間搾取や労働条件が悪化する恐れがある

二重派遣には、中間搾取や労働条件の悪化につながる恐れがあります。

中間搾取とは、企業と企業の間に立って労働力を提供して報酬を得る行為です。中間搾取は労働者の賃金を不当に下げる恐れがあるため、労働基準法第6条で明確に禁止されています。

また、二重派遣が行われると、再派遣先で労働者に不利な条件が課されるリスクも高くなります。

派遣先は労働者の権利を保護するため、法令を遵守しましょう。

引用元:e-Gov 法令検索 労働基準法 第六条
(中間搾取の排除)
第六条 何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

二重派遣で企業が受ける罰則とは

職業安定法と労働基準法は、二重派遣に対する罰則規定を設けています。ここでは、以下の事例を基にどのような罰則が誰に対して適用されるか解説します。

「派遣元X社から派遣社員を受け入れたY社が、取引先のZ社にX社の派遣社員を再派遣してZ社から金銭などの利益を受け取った」

罰則の対象は二重派遣を行った企業であり、派遣社員が罰則を受けるケースはありません。

①職業安定法による罰則規定

二重派遣は、職業安定法第44条が禁じる「労働者供給事業」に該当します。
これに違反した場合、同法第64条に基づき罰則が科されます。罰則内容は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」と非常に重いものです。
本件の罰則は、派遣社員を再派遣した派遣先(Y社)が主な対象です。場合によっては、再派遣先(Z社)も対象となる可能性があるため注意が必要です。

②労働基準法による罰則規定

労働基準法第118条では、第6条「二重派遣の禁止」に違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると定められています。

今回の事例では、Y社がZ社にX社の派遣社員を再派遣して金銭を受け取りました。そのため、派遣先Y社の行為は法第6条違反に当たります。

職業安定法の罰則とは異なり、違法に問われるのはY社のみです。Z社は知っていたか否かにかかわらず、労働基準法違反の対象外とされます。

二重派遣を避ける対策とは?派遣先ができる具体例

二重派遣は、意図せず行ってしまうケースもあります。そのため、派遣先企業は二重派遣を避けるための対策をしなければなりません。

二重派遣を避けるには「派遣社員に対する指揮命令権がどこにあるか」を定期的に確認することが大切です。基本として、以下のポイントを押さえましょう。

● 派遣社員の指揮命令権は、派遣先
● 派遣社員を雇用しているのは派遣元
● 派遣社員の就業先が他社であっても指揮命令を行うのが派遣先企業であれば、二重派遣には当たらない

二重派遣が行われているか否かの判断は、派遣社員の就業実態をみるのが一般的です。書類上は派遣先に指揮命令権があっても、現場では再派遣先の責任者が指揮していたといったことがないように気をつけましょう。

【まとめ】 二重派遣を正しく理解して企業と労働者を守ろう

二重派遣の禁止は、労働者保護の観点から生まれたルールです。派遣先は派遣社員の労働環境を保護するためにも、ルールの正しい理解が必要です。労働者を大切にすることは、結果的に企業の社会的信用の向上と将来の発展にもつながります。

二重派遣を避けて、社会とともに歩む企業として成長を続けましょう。

メタディスクリプション
二重派遣とは、法律で明確に禁止される行為です。本記事では、二重派遣を避けるために派遣先企業が気をつけるべきポイントをわかりやすく解説しています。最後までご覧になれば、意図しないうちに二重派遣を行ってしまう事例や対処方法も理解できます。

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