派遣社員を受け入れる人事部の皆さま、このような悩みはありませんか?
「派遣社員にどこまで仕事を頼んで良いのかわからない」
「派遣社員に働いてもらううえで何に注意すればよいだろう」
このようにお悩みの方も多いでしょう。
派遣社員の働き方は労働者派遣法で厳密に規定されており、依頼できる業務範囲にもルールがあります。
今回は、派遣社員を受け入れるうえで押さえておくべき業務内容や、注意点をご紹介します。
派遣社員にトラブルなく活躍してもらえるよう、必ずチェックしましょう。
<目次>
■派遣社員に依頼できる業務範囲には決まりがある
・派遣社員にさせてはいけない業務範囲
・労働者派遣法で禁止されている業務
・契約内容にない業務
・業務内容
・時間外労働
・部署異動
・接待
・出張
■業務以外で気をつけるべきこと
・派遣前の面接
・二重派遣
・日雇い派遣
■派遣社員に依頼できる業務範囲を理解して活躍してもらおう
派遣社員に依頼できる業務範囲には決まりがある
直接雇用の社員と異なり、派遣社員に依頼できる業務には制限があります。
なぜなら派遣社員を保護するために、労働者派遣法で業務内容や処遇に関するルールが細かに決められているため、
派遣社員の受け入れには、関連する法令を遵守する必要があるのです。
しかし、現状は法令の不知などの理由で、派遣社員の働き方に関するトラブルが頻発しています。
人事部のみならず、現場で派遣社員を受け入れる管理職にも、派遣社員のルールを必ず周知徹底しましょう。
派遣社員にさせてはいけない業務範囲
派遣社員に依頼してはいけない業務は、大きく分けて以下の2種類あります。
1. 労働者派遣法で禁止されている業務
2. 契約内容にない業務
具体的な制限内容を把握した、適切な業務依頼が大切です。
依頼できない業務範囲を確認しましょう。
労働者派遣法で禁止されている業務
まずは、法律で派遣が禁止されている業務です。
労働者派遣法では、派遣を禁止する「適用除外業務」が規定されています。
以下の業務は、原則派遣できません。
● 建設業務
● 港湾運送業務
● 警備業務
● 病院等での医療関連業務
● 士業
それぞれ一部例外はありますが、原則として派遣できないため注意しましょう。
適用除外業務で人材派遣を受け入れた場合、違反是正の勧告を受けます。
それでも従わない場合には、企業名の公表等の罰則を受ける可能性があります。
契約内容にない業務
次に、契約書による業務範囲の制限について確認しましょう。
派遣社員が担当する業務は、労働者派遣契約書に明記されており、記載のない業務は原則として依頼してはいけません。
具体的な例をご紹介します。
業務内容
労働者派遣契約書に記載されていない業務は、派遣社員に依頼できません。
例えば、経理業務のみで派遣されている方に接客を依頼したり、営業に同行してもらったりするのは禁止です。
契約外の業務を依頼しないように、派遣社員の契約内容を関係者に周知徹底しましょう。
時間外労働
契約書への記載なしに、時間外労働をさせてはいけません。
派遣元企業が36協定を結んでいない場合、時間外労働が違法になる可能性があるため、確認が必要です。
派遣労働者と派遣先の合意だけで残業をするのではなく、事前に派遣元と協議しましょう。
そのうえで、必ず派遣契約書に残業に関する事項を明記してください。
部署異動
部署異動を命じて業務に従事させてはいけません。
派遣社員の契約書には、所属する部署や指揮命令者が明記されています。
そのため、契約期間中は部署を変更できません。
異動を伴わない臨時でのヘルプ業務も、原則として依頼できないので注意が必要です。
勝手な部署異動はトラブルのもとなので、異動させたい場合は派遣元に相談しましょう。
接待
接待や飲み会は基本的に業務に含まれないため、派遣社員に参加を強要してはいけません。
本人の意思を尊重し、希望する場合には、あくまで業務外として参加してもらいます。
業務として接待に同席してもらいたい場合は、事前に派遣元企業と本人へ相談しましょう。
出張
契約内容として記載がないにもかかわらず、派遣社員に出張をさせるのは禁止です。
出張してもらう場合、必ず派遣元企業や本人との事前協議が必要です。
出張にかかる交通費や宿泊費の取り扱い、労働時間の換算方法など、事前に取り決めましょう。
派遣元との契約がないまま出張させると、経費や事故発生時の扱いについてトラブルになりかねません。
必ず契約書に明記してから、依頼しましょう。
業務以外で気をつけるべきこと
業務以外にも、派遣社員に働いてもらううえで気をつけたいポイントを3つ紹介します。
以下に該当する場合は法令違反になる危険性があるため、必ず是正してください。
派遣前の面接
派遣を予定している社員との事前面接は、法律で禁止されています。
そもそも労働者派遣とは、特定の個人を派遣するものではありません。
契約内容に基づく業務を提供するものであるために、個人面接は禁止されています。
「Aさんを派遣してください」などの指名もできないため、注意しましょう。
二重派遣
グループ会社への人材派遣を行っている企業などは、「二重派遣」に注意しましょう。
二重派遣とは、派遣社員をグループ会社や取引先など、別の組織に派遣して就業させる行為です。
指揮命令権が不明確になるほか、中間搾取の危険性があるために、法律で禁止されています。
派遣社員には、契約で定めた企業でのみ就業してもらいましょう。
日雇い派遣
「日雇い派遣」も、法律で禁止されています。
日雇い派遣とは、1日単位や30日以内の短期間での労働者派遣です。
ただし、60歳以上の派遣社員や、学生・副業の派遣登録者、企画立案や金融商品の営業などの専門性の高い業務では、例外的に日雇い派遣が認められています。
30日以内の短期派遣を希望する場合は、違法性がないか派遣元に確認しましょう。
派遣社員に依頼できる業務範囲を理解して活躍してもらおう
派遣社員の活用は、社内で足りない知見やリソースを補う有益な手段です。
一方で直接雇用とは異なるルールが多数存在するために、派遣先企業が正しい知識を身に着ける必要があります。
派遣社員に依頼してはいけない業務範囲や注意点を理解し、適切に業務に取り組んでもらえるよう、環境整備に取り組みましょう。
Q1.派遣法に違反して業務を依頼してしまった場合、罰則はありますか?
二重派遣とみなされた場合、派遣先の企業に1年以下の懲役または40万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
法令の不知は、免罰理由になりません。関連法令をしっかり理解し、遵守しましょう。
Q2.派遣開始後に、業務内容を追加で依頼したい場合はどうすればよいですか?
契約中に業務内容を追加・変更してもらいたい場合は、派遣元企業に確認のうえ、派遣社員本人の合意が必要です。
合意が得られた場合は、業務変更を開始する前に、必ず契約書を再締結しましょう。
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