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副業解禁の企業メリット・デメリット|リスク回避の必須対策も解説

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」発表などを受け、副業を始める労働者が増えています。

「個人にメリットの多い副業だけど、企業側にも良い影響がある?」
「副業を解禁する前に注意すべき点は何だろう?」

このようにお考えの企業の方もいらっしゃるでしょう。
今回は副業解禁による企業のメリット・デメリットや、解禁前に実施すべき対策をまとめました。
自社で副業解禁をする前に、この記事を読んで参考にしてください。

出典:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

<目次>
■副業を始める労働者が増えている
■副業解禁による企業側のメリット
メリット1|従業員のスキルや経験が向上する
メリット2|優秀な人材の確保・定着につながる
メリット3|自社でも多様な人材を活用できるようになる
■副業解禁による企業側のデメリットと対策
デメリット1|情報漏洩のリスクがある
デメリット2|業務に支障をきたす危険性がある
デメリット3|従業員が離職する危険性がある
■副業解禁前に検討すべきリスク回避ポイント
ポイント1|副業の条件を決めて規則化する
ポイント2|労働管理・健康管理を徹底する
ポイント3|従業員のキャリアプランを把握する
従業員の副業解禁は企業の成長を加速させるチャンス

副業を始める労働者が増えている

日本経済団体連合会が2022年に実施した調査によると、社員の副業・兼業を「認めている」企業が53.1%、「認める予定」の企業は17.2%でした。
約8割の企業が、副業解禁に乗り出しています。

出典:日本経済団体連合会「「副業・兼業に関するアンケート調査結果」を公表」

また、株式会社リクルートが2021年に正社員7,695人に調査した結果、現在兼業・副業をしている方、今後の実施意向のある方の合計は55.9%でした。
過半数の社員が、副業を前向きにとらえています。

出典:株式会社リクルート「兼業・副業に関する動向調査データ集2021」

これらの結果より、副業解禁は日本企業のスタンダードになると予想されます。

副業解禁による企業側のメリット

副業は、従業員だけでなく、解禁する企業にとっても有益です。
副業解禁によって企業にもたらされるメリットを3つ紹介します。

メリット1|従業員のスキルや経験が向上する

副業による従業員のスキルアップは、企業の業績向上に直結します。

副業によって他社での就業経験を積めば、従業員が自社で経験できないスキルやノウハウを得るチャンスになるでしょう。

副業で得た知識を自社に生かしてもらえば、新しい視点や技術を導入するきっかけに繋がり、サービスの幅や質の向上が期待できます。

メリット2|優秀な人材の確保・定着につながる

Job総研の調査によると、副業をしていない労働者のうち副業・兼業をしたいと思う、またはどちらかといえばしたいと思うと回答した割合が、89.8%に上りました。

出典:PR TIMES「Job総研による『2022年 副業・兼業に関する実態調査』を実施 コロナ禍を境に副業始める社会人4割増 今後始めたいは9割」

副業に取り組みたい多くの労働者が、副業解禁をしていない企業での就職を避ける可能性があります。

今後も企業が労働者から選ばれ続けるためには、従業員が副業できる体制が必要です。

メリット3|自社でも多様な人材を活用できるようになる

副業の経験者が増えれば、自社でも副業・兼業の労働者を受け入れるノウハウが蓄積されます。
結果として、雇用形態にこだわらない多様な人材を受け入れる風土が、社内で醸成されるでしょう。

人口減少の時代、人材確保は企業の重大な経営課題です。
副業解禁は、多様な働き方の労働者を活用するための第一歩となるでしょう。

副業解禁による企業側のデメリットと対策

副業解禁は、企業にデメリットをもたらす危険性も包含しています。

具体的なデメリットと対応策を確認しましょう。

デメリット1|情報漏洩のリスクがある

副業者が、企業の機密情報を他社に漏洩させる危険性があります。

特に同業他社に事業戦略上で重要な情報が漏れると、企業の存続にかかわる重大インシデントとなります。

同業他社での副業を禁止する競業避止義務の取り決めや、秘密保持誓約書の締結などの検討が必要です。

デメリット2|業務に支障をきたす危険性がある

副業による長時間労働で疲労がたまると、本業でのパフォーマンスが低下する可能性があります。
また、副業に関心が向きすぎた結果、本業である自社業務をおろそかにする危険性もあるでしょう。

対策として、従業員のトータルの勤務時間や健康状態の把握が大切です。
明らかに支障がある場合は、職務専念義務違反として、注意喚起や副業許可の取り消しなどを検討してください。

デメリット3|従業員が離職する危険性がある

副業に夢中になった結果、自社を辞めて副業先に専念したり、独立したりして、離職する危険性があります。

副業で得たスキルを自社で活用できる場を作ったり、本人の強みを生かせる仕事へアサインしたりする工夫が必要です。

一社に勤め続ける文化が薄れつつある現代、労働者に長く勤めてもらうには、従業員が自身の強みを生かして評価される実感が大切です。

従業員一人ひとりに向き合い、自社に勤めたいと思われるような魅力的な環境作りを心がけましょう。

副業解禁前に検討すべきリスク回避ポイント

従業員の副業による企業側のリスクを踏まえ、企業が事前に押さえるべきポイントを3つ解説します。

ポイント1|副業の条件を決めて規則化する

リスク回避の観点から、従業員に副業を許可する際のルールを明確にし、就業規則などに明記しましょう。

職務専念義務 就業規則などに、就業時間中は業務に専念する旨を明記
競業避止義務 就業規則などに、副業してはいけない同業他社の内容を明記
秘密保持誓約書
自社の機密情報を漏らさない旨の誓約書を提出してもらう

自社にとって損失になるパターンを予測し、ルールによって規制する必要があります。

ポイント2|労働管理・健康管理を徹底する

従業員が副業先でも雇用される場合、労働時間の上限規制は両社で合算した時間が適用されます。
そのため、副業先の勤務時間を申告してもらうなど、長時間労働にならない工夫が必要です。

副業時間の上限を設けたり、管理職による従業員の健康状態の確認を徹底したりするなど、副業者の健康に配慮する仕組み作りを検討しましょう。

ポイント3|従業員のキャリアプランを把握する

従業員が副業をする理由は、収入アップやスキルアップ、人脈の形成などさまざまです。
副業先の方が自分の望む働き方に近いと判断すれば、所属企業を離職して転職する危険性があります。

上司面談を実施し、従業員が副業によって得たいものや、今後のキャリアイメージを確認しましょう。
従業員の希望するキャリアが自社で叶う環境があれば、離職防止につながります。

従業員の副業解禁は企業の成長を加速させるチャンス

企業の副業解禁の流れは、今後ますます加速すると予想されます。

副業解禁は企業側のメリットも多いため、事前にリスク対策を十分に検討し、必要な制度整備を行ったうえで、副業解禁を実施してください。

副業が従業員にとってスキルアップの機会になれば、自社の事業にもプラスの影響を与えてくれるでしょう。

Q1.副業を禁止すると、法律違反になりますか?
現在、副業の禁止を違法とする法律はありません。
そのため、就業規則などによって、従業員の副業を禁止しても違法にあたりません。

ただし、企業が雇用契約で定めている労働時間以外の過ごし方は個人の自由であるため、配慮が必要です。

Q2.副業先で従業員が労災にあった場合、本業側の企業で何か対応が必要ですか?
本業先でも、労災に関する一部手続きが必要です。

2020年8月、労働者災害補償保険法が改正されました。
この改正により、複数の事業場で雇用される者が労働災害にあった場合、すべての事業場の賃金額を合算した額を、給付基礎日額として給付額を決定します。
そのため、本業の企業でも賃金額の提示などが必要です。

副業を解禁する企業の人事部の皆さまは、厚生労働省のパンフレットをよく読み、制度把握に努めてください。

出典:厚生労働省「複数事業労働者への労災保険給付 わかりやすい解説」

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