日本の少子高齢化が引き起こす課題として注目を集める「2025年問題」。
すべての企業に大きな影響を与える重大な経営課題です。
企業が今後も継続的に成長していくためには、2025年問題を正しく理解し、早急に対応を始めなければなりません。
この記事では、2025年問題が企業に与える影響を中心に、政府の対応や企業が取るべき対策を解説します。
自社への影響や解決策を検討する際の参考にしてください。
<目次>
■2025年問題とは?
■2025年問題が企業にもたらす影響
1.事業承継者の不在
2.人材不足の深刻化
■2025年問題に関する政府の対応
1.社会保障全般の見直し
2.高齢者雇用の促進
3.事業承継の支援
2025年問題に対して企業が取るべき解決策
1.事業継承対策
2.多様な人材の採用と環境整備
3.介護離職対策の推進
2025年は目前!今すぐ解決策の検討を
2025年問題とは?
2025年問題とは、「団塊の世代」と呼ばれる方々が後期高齢者になるために引き起こされる、社会全般に対する諸問題の総称です。
医療費などの社会保障費が莫大に膨れ上がる一方、労働力人口の減少も相まって現役世代への負担は増加。
医療や介護のリソース不足など、さまざまな問題が顕在化するといわれ、大きな社会問題として注目されています。
2025年問題が企業にもたらす影響
2025年問題は、医療や介護制度、年金のあり方などさまざまな課題を包含した社会的な問題です。
この記事では、2025年問題の中でも企業経営への影響に焦点を当てて解説します。
1.事業承継者の不在
中小企業庁によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人です。
そのうち約半数となる127万人は、後継者が決まっていません。
これは、日本企業全体の1/3に当たります。
承継者が不在のままの企業は、黒字倒産する危険性があります。
2.人材不足の深刻化
株式会社帝国データバンクの調査によると、2023年1月時点で正社員の人手不足を感じている企業は、全体の51.7%と過半数にのぼります。
コロナ禍で一時的に不足率が落ち込んだ時期を除き、2018年以降は常に50%前後をキープ。
労働力人口の減少によって、人材不足は今後さらに深刻化すると予測されています。
高齢者人口の増加による介護離職も、企業が抱える大きな課題です。
総務省の就業構造基本調査によると、平成29年度に介護・看護のために前職を離職した人は約9万9千人でした。
要介護者の割合は増え続けており、今後更に介護離職者が増加するといわれています。
2025年問題に関する政府の対応
2025年問題を見据えて、政府は関連法の改正など多方面での対応を推進中です。
今回は政府が推進している2025年問題への対策のうち、企業経営に直結するものを3つ紹介します。
1.社会保障全般の見直し
2022年から段階的に厚生年金の加入条件が緩和され、短時間労働者も厚生年金に加入しやすくなっています。
条件緩和の目的は、増え続ける社会保障費の抑制です。
将来の1人当たりの年金受給額が増額すれば、自律して生活できる人が増えると見込んでいます。
厚生年金の加入者が増えれば、企業が負担する社会保険料は増加するでしょう。
2.高齢者雇用の促進
2021年から高年齢者雇用安定法の一部が改正され、希望する労働者が70歳まで就労できる機会の確保が企業に努力義務として課せられました。
元気なシニアが長く就業できる環境の整備によって、社会保険料を負担する側の労働者の確保につなげる目的です。
企業においては、今後の法改正等を注視しつつ、定年や再雇用制度を見直す必要があります。
3.事業承継の支援
企業の後継者不足に対応するため、事業承継でハードルになりやすい資金面の支援が進められています。
2008年、経営承継円滑化法が成立しました。
数度の改正を経て、認定企業が継承資金の融資支援を受けられたり、自社株式にかかる贈与税・相続税が猶予されたりと、中小企業の承継を後押しする内容に変更されています。
後継者問題を抱える企業は、経営承継円滑化法等を活用し、スムーズに事業承継できる準備が必要です。
2025年問題に対して企業が取るべき解決策
2025年問題への対応は、企業の実情に合わせた個別の対策が必要です。
ここからは、事業承継者の不在や人材不足などに対し、企業が取るべき具体的な解決策を3つ紹介します。
1.事業継承対策
事業承継には、一般的に5~10年の準備期間が必要といわれています。
準備期間で検討すべき内容やポイントは、以下の通りです。
対策 | ポイント |
サクセッションプラン(後継者育成計画)の作成 | 次期経営者候補の選定・育成計画の立案・推進 |
専門家の支援 | 顧問税理士・金融機関などのサポートを検討 |
M&Aの検討 | 後継者不在の場合の第三者承継の検討 |
組織開発やM&Aの専門コンサルタントの活用も検討してください。
2.多様な人材の採用と環境整備
女性や高齢者、外国人など多様な人材に活躍してもらう環境を整えましょう。
対象者 | 解決策 |
女性 | ・妊娠・出産後も働きやすい制度の導入(時短・フレックス・在宅勤務など)
・ポジティブ・アクションの推進(女性の管理職登用など) |
高齢者 | ・定年・再雇用制度の見直し
・健康経営の推進 |
外国人 | ・言語や生活面でのサポート
・正当な評価制度の整備 |
制度整備だけでなく、多様な人材を受け入れる風土の醸成も大切です。
3.介護離職対策の推進
介護離職を防ぐには、従業員を雇用する企業の積極的な取り組みと理解が必要です。
対策 | 具体例 |
介護関連制度の周知 | 介護休業・介護休暇・勤務時間の短縮など |
介護相談窓口の設置 | 社内制度や公的制度の紹介など |
介護セミナーの実施 | 介護保険サービスや介護の心構えなどのセミナー実施 |
要介護者を抱える従業員の心労に寄り添い、無理なく働ける環境を整備しましょう。
2025年は目前!今すぐ解決策の検討を
2025年を前に、すでに多くの企業が人材不足や後継者問題に直面しています。
事業承継も人材確保も、取り組んですぐに効果が表れるものではないため、少しでも早い着手が大切です。
2025年問題は今後も企業が持続的に発展していくために不可避な経営課題と捉え、今すぐ対策を始めてください。
Q1.「2035年問題」とは何ですか?
2035年には、総人口の3人に1人が65歳以上の高齢者、5人に1人が75歳以上の後期高齢者になるといわれています。
医療負担がさらに増加し、医療や介護人材の不足がより深刻になるため、2025年問題以降を見据えた長期的な対策が必要です。
Q2.事業承継に関する公的な相談窓口はありますか?
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」を活用しましょう。
第三者承継の支援だけでなく、親族内承継の支援や、創業希望者と後継者不在の企業をマッチングするサービスも展開しています。
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