パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法の見直し議論を展開している労働政策審議会「同一労働同一賃金部会」(小畑史子部会長)が8月8日開かれました。この日は、有期労働者の待遇改善に向け労使協議の「土台」として活用されている「同一労働同一賃金ガイドライン」について、実効性の確保と改善加速の観点から公労使が活発に議論を繰り広げました。
同部会は、「働き方改革関連法」のうち、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を巡る「パート・有期法」と「派遣法」について、20年4月の施行から5年経過したことを踏まえて開かれています。6月までに7回開催して(1)改正後のパート・有期法と派遣法の「均等・均衡待遇規定」(2)同一労働同一賃金ガイドライン(3)非正規雇用労働者に対する支援(正社員転換等のキャリアアップ、無期雇用フルタイム労働者への同一労働同一賃金ガイドラインの考え方の波及)――を軸に議論を展開中です。
この日は、事務局の厚生労働省がこれまでの公労使の主な意見や有識者からのヒアリング概要、労使関係団体からのヒアリング概要の最新版を準備したうえで、「同一労働同一賃金ガイドライン」に関する論点として、(1)裁判例を踏まえたガイドラインの見直し(2)通常の労働者の待遇引き下げによる待遇の相違の解消(3)「その他の事情」の明確化(4)多様な正社員及び無期雇用フルタイム労働者(5)その他――を挙げ、議論を掘り下げました。
(1)の裁判例に関する労使のスタンスは、労働者側が「判決は複数の事情や状況などを含めたものであって、判決をそのまま記載するのは避けるべき」とし、使用者側は「現場で具体的な理解が進むので最高裁判決は記載するのが望ましい」と分かれました。このほか、出席した公労使全員がガイドラインのあり方について、現場実態と運用を念頭にそれぞれの視点から提言しました。
「派遣」については、人材サービス産業で働く労働者が企業の枠を超えて集まっている労働組合の委員が、4点の見直し検討を要望。(1)派遣料金は派遣元と派遣先の適切な交渉が大前提であり、派遣先がこれに応じる配慮義務の明記(2)交代勤務を含む特殊勤務の手当について、基本給に上乗せして支払ったことがわからないケースが散見されるため、上乗せする場合は事前説明が必要であることを記載(3)食堂などの福利厚生施設の利用で、派遣先の利用料金より派遣社員の料金が高く設定されていることがあり、こうした差別を認めないことの周知(4)病気休職について、有期の派遣社員は派遣契約と雇用契約の期間が異なる場合があり、雇用契約の期間で認めることが望ましいとする記載――について、具体例を示しながら主張しました。
次回は9月上旬に開かれ、「パート・有期法」と「派遣法」、それに関するガイドラインなどの見直し議論は後半戦に入ります。
審議会の資料は下記の通りです(厚生労働省ホームページより)。
・これまでの同一労働同一賃金部会での主な意見
・有識者からのヒアリング概要
・労使関係団体等からのヒアリング概要
・論点(案)(同一労働同一賃金ガイドライン関係)
・論点案(案)に関する追加資料
・同一労働同一賃金ガイドライン
提供:アドバンスニュース
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