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最低賃金の全国平均1000円超、過去最大41円増で決着

政府の中央最低賃金審議会(藤村博之会長)は7月下旬、2023年度の最低賃金(最賃、時給ベース)の引き上げを過去最大の4.3%増、41円を目安として示しました。全国平均では前年の961円から1002円に引き上げられます。これを目安に各都道府県の審議会が引き上げ額を決定し、10月から順次施行となります。

<<初めて「3グループ」で目安、新たに5府県で1000円超>>
最賃は物価水準や給与水準などによって、47都道府県をA、B、Cの3グループに分け、目安額も少し異なります。昨年までは4グループでしたが、地方の最低賃金が上がりやすい仕組みになるよう変更。今回、最も水準の高いAグループの東京など6都府県は41円で、Bグループの北海道など28府県は40円、Cグループの青森など13県が39円としました。

現在は東京、神奈川、大阪の3都府県が1000円台に達していますが、仮に目安通りに引き上げられると、埼玉、愛知、千葉、京都、兵庫の5府県も「1000円都府県」になります。しかし、東京が1113円になるのに対して、青森や沖縄など10県は892円となり、最高と最低の開きは221円とほとんど変わらず、最賃議論の主要課題の一つだった「地域格差の縮小」は是正されずに残った形です。

政府はかねてより最賃の引き上げに積極的で、2012年の最賃749円(前年度比1.63%増)から、第2次安倍政権が発足後の13~15年度は15~18円(同2.00~2.31%増)、16~19年度はさらに25~27円(同3.04~3.13%増)と引き上げ額のギアを上げてきました。17年度には「働き方改革実行計画」の一環として、「年率3%程度をメドとして、全国平均1000円の早期実現」を決定。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大で事実上据え置きましたが、21年度は28円(同3.10%増)と再び3%台に伸ばし、22年度もこの流れを維持。今年はさらにアップし、約10年で250円も上昇することになります。

<<目安額の根拠は何?労使の双方の主張とは>>
同審議会の「目安に関する小委員会」では、「春闘など足元の賃金動向」「企業の賃金支払い能力」「労働者の生計費」の3要素を考慮して公労使が協議を重ねてきました。この中で労働者側が重要視したのは「生計費」です。物価高で食糧費や光熱費を含む生活費がかさんでいるとして「一律47円増」を求めました。現在の最賃で最も低い青森など10県(853円)でも900円台に届くほか、5%前後の上昇によって約4%とされる物価上昇分をカバーできる水準だと主張。また、今年の春闘でパートなど非正規労働者の賃上げ率が時給ベースで平均5.01%に達し、連合は「この水準を労組のないすべての働く人に波及させるべき」と訴えました。

一方で、使用者側は「企業の支払い能力」を重視すべきだと強調。厚労省の調査で、最低賃金すれすれで働く人が多い従業員30人未満の企業の今年の賃金上昇率は2.1%。これでも26年ぶりの高さですが、大企業中心の春闘に比べると低く、企業間格差が広がっている実態を主張しました。日本商工会議所は「原材料の高騰が中小企業の経営を圧迫しており、過度の賃金引上げの負担を担わせないよう配慮を」と求めました。

両者の考え方や論拠を聞いて、公益委員(学識者)は「3要素のうち生計費に重きを置く目安額とするが、支払い能力に欠ける中小企業に対して生産性向上に努める企業への助成金や価格転嫁対策を強化してほしい」と政府に要望しています。

提供:アドバンスニュース

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