「派遣社員に対して効率的な教育・OJTは可能だろうか?」
「派遣元から協力を求められるけど、受け入れ側に義務はある?」
上記の疑問を持つ経営者・人事担当者の方へ。
今回の記事では、派遣社員に対する教育訓練で知っておくべきポイントをまとめました。
実際に進めるうえでの準備や、実施する具体的な流れも解説しています。
ぜひ、最後までご覧いただき、派遣社員のOJTに役立てましょう。
<目次>
派遣社員の教育訓練義務化・OJTの要点
要点1.教育訓練義務化の背景
要点2.義務化の目的はキャリア形成・待遇の改善
派遣社員のOJTで知っておくべきポイント
1.事前に内容の周知
2.訓練費用は無償
3.派遣先管理台帳に記録・報告
派遣社員のOJTで進めておく準備
1.段階的キャリアアップ形成のカリキュラム作成
2.派遣元管理台帳に教育内容を記載
3.労働局への実施報告
派遣社員のOJTを実施する具体的な方法
1.大人数でも一度で実施できる集合研修
2.実際の仕事をしながらのOJT
3.オンライン形式の学習
Q1派遣社員同士で教えるのは違法?
Q2.OJTに向いてない人に有効な方法はありますか?
派遣社員の教育訓練義務化・OJTの要点
派遣社員の教育訓練・OJTについて、知っておきたい要点は以下のとおりです。
●教育訓練義務化の背景
●義務化の目的はキャリア形成・待遇の改善
まずは要点を理解して派遣社員のOJTを進めるようにしましょう。
要点1.教育訓練義務化の背景
派遣先企業は、派遣社員に自社の従業員と同様の教育訓練を提供しなければなりません。
上記は、2020年と2021年に労働者派遣法が改正されたためです。
近年では、新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークが増加しました。
そのため、派遣社員の教育訓練の重要性がクローズアップされています。
派遣社員のキャリア形成については、正社員と同様に計画を立てる必要があります。
参照:派遣労働者の ≪同一労働同一賃金≫ の概要 (平成30年労働者派遣法改正)
要点2.義務化の目的はキャリア形成・待遇の改善
派遣社員の教育訓練の義務化は、正社員との待遇差を是正するためです。
教育訓練により、派遣社員は能力やスキルの向上が見込めます。
結果的に、キャリア形成や待遇改善につながるはずです。
派遣元・派遣先は、教育訓練の機会や内容を明示・提供する義務があります。
教育訓練の義務化は、派遣業界の健全化にも寄与します。
派遣社員のOJTで知っておくべきポイント
派遣社員にOJTを実施する際に知っておくべきは以下の3点です。
●事前に内容の周知
●訓練費用は無償
●派遣先管理台帳に記録・報告
OJT・教育訓練を円滑に進めるために、ぜひ押さえておきましょう。
1.事前に内容の周知
OJT・教育訓練を開始する際には、事前に派遣社員への周知・同意が必要です。
2021年の改正で「労働者派遣法」において、派遣先企業は「教育訓練の内容」を伝える義務が生じました。
事前に派遣社員へ教育訓練の内容を説明し、同意を得ておきましょう。
2.訓練費用は無償
業務に係るOJT・教育訓練の費用は、派遣先企業が負担します。
OJT・教育訓練を受けることで、派遣社員は自分の能力を高められる点がメリット。
また、訓練は有給休暇の扱いで実施されるため、訓練時間分の賃金をも保証されます。
3.派遣先管理台帳に記録・報告
教育訓練を実施したときは、「派遣先管理台帳」に内容を記載しなければなりません。
派遣先企業は、教育訓練した日時や内容などを「派遣先管理台帳」を通して派遣元企業に報告します。
※なお「派遣先管理台帳」の記録・報告は法令によって義務化。
記録・報告を怠ると、30万円以下の罰金が科せられる可能性もあります。
参照:厚生労働省:労働者派遣法第64条 違法行為に対する罰則、行政処分等
派遣社員のOJTで進めておく準備
派遣社員のOJTで進めておく準備は以下のとおりです。
●段階的キャリアアップ形成のカリキュラム作成
●派遣元管理台帳に教育内容を記載
●労働局への実施報告
OJT・教育訓練するための準備について紹介します。
1.段階的キャリアアップ形成のカリキュラム作成
フルタイム勤務の派遣社員に対しては、入社3年目までに年8時間の教育訓練が義務付けられます。
ちなみに、8時間については分割も可能です。
派遣社員の業務内容や、課題の整理に着手してください。
対象者の習熟レベルに合わせて、段階的なカリキュラムが求められます。
2.派遣元管理台帳に教育内容を記載
派遣元企業は、派遣社員の雇用環境を守るために「派遣元管理台帳」の作成が必要です。
上記については、3年間の保存が義務づけられています。
台帳が利用される機会は、ほぼありません。
しかしながら、作成を怠ったり紛失したりすると「30万円以下の罰金」「労働者派遣許可の取消し」の可能性があります。
参照:厚生労働省:労働者派遣法第64条 違反行為に対する罰則、行政処分等
3.労働局への実施報告
派遣企業は毎年6月末までに、教育訓練の内容を「労働者派遣事業報告書」に記載し、所轄の労働局へ提出する義務があります。
派遣元企業が「派遣事業を正しく運営しているか」「派遣労働者の労働環境・待遇を守っているか」を所轄の労働局が確認しています。
派遣社員のOJTを実施する具体的な方法
実際の教育訓練は、以下の3つが主流です。
●集合研修
●OJT
●オンライン学習(eラーニング)
それぞれの特徴を紹介していきます。
1.大人数でも一度で実施できる集合研修
「集合研修」は複数スタッフを同じ場所に集め、講義する研修方法。
人数ごとに区分し、一度に教育できる点がメリットです。
質疑応答も簡単にできるので、課題・問題などの疑問を迅速に解決できます。
2.実際の仕事をしながらのOJT
「OJT」とはOn the Job Trainingの略です。
実際の仕事をしながら、技術と能力を身に付ける教育方法です。
多くの場合、派遣先企業の正社員がOJT担当者として努めます。
経験値の高い要員から学べるので、実践的なスキルが身につきやすい方法です。
また、OJT担当者と派遣社員双方のコミュニケーションも取りやすく、業務効率の向上も期待できるでしょう。
3.オンライン形式の学習
PCやスマートフォンなどを用いるオンライン学習もおすすめです。
一例として、ビデオやテキストなどの教材で派遣社員に自習させる方法や、WEB会議システムを使う方法などがあります。
受講者は自身のペースで学習でき、企業側もフィードバックや評価をしやすい点がメリットです。
Q1.派遣社員同士で教えるのは違法?
派遣社員が教育するのは、原則としてNGです。
派遣社員同士で教育訓練すると、正社員の負担が減り効率的に見えます。
しかしながら、契約に教育訓練の実施が含まれていない場合、派遣法に抵触します。
派遣先は契約内容を確認して、違反がないように注意しましょう。
参照:厚生労働省:労働者派遣法第37条第1項 違反行為に対する罰則、行政処分等
Q2.OJTに向いてない人に有効な方法はありますか?
OJTが苦手な方に対するフォローについて。
適性の問題で済まさずに、以下の3点を見直しましょう。
OJTの目的や意義を明確に伝える
指導者と対象者のマッチングを工夫する
指導者に対する教育支援を図る
指導者や対象者との面談や、フィードバックが重要です。
焦りすぎず、段階的に実施するとよいでしょう。
メタディスクリプション
派遣先企業は、派遣社員に対して教育訓練をすることが必要です。本記事では派遣先企業が行うべきOJT・教育訓練についてポイントや、準備方法などについてまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
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